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日外会誌. 93(8): 851-860, 1992


原著

誤嚥性肺炎に関する基礎的研究
-カラゲニン誤嚥性肺炎モデルマウスにおける食細胞機能の検討-

防衛医科大学校 第2外科(指導:田中 勧教授)

後藤 正幸

(1991年5月23日受付)

I.内容要旨
食道癌術後の誤嚥が肺の非特異免疫能に及ぼす影響を検討する目的で,カラゲニンを気管内に注入して誤嚥性肺炎モデル (致死率25%) を作成した.このモデルマウスを用いて末梢血,肺胞気管支洗浄,肺組織内の好中球,肺胞マクロファージの6,24,72,120時間後の細胞数の変化,細胞内活性酸素産生能,貧食能について検討した.肺胞マクロファージについては,細胞内の活性酸素産生の局在や活性酸素種の種類,細胞表面抗原の検討も合わせて行った.肺炎作成後炎症局所では好中球の増加が主体であり肺胞マクロファージの絶対数には変化がなかった.DCFH-DAによるカラゲニン群の好中球の活性酸素産生能は肺胞気管支洗浄液中で72時間以後低下し,肺組織内では観察期間中対照群に比し有意に低値を示した.肺胞マクロファージのDCFH酸化能については,肺胞気管支洗浄液,肺組織内で共に観察期間中対照群に比し有意に低値を示した.貧食率は好中球では両群に差はなかったが,カラゲニン群の肺胞気管支洗浄液で72時間以後低下する傾向であった.肺胞マクロファージでは6時間の肺組織内で対照群に比べカラゲニン群で高値を示した.肺胞マクロファージは対照群で末梢血単球や好中球に比べDCFH酸化能が高かった.この高いDCFH酸化能は対照群でKCN,Deferoxamine投与で低下した.カラゲニン群ではDeferxamineにより低下したが,KCN投与では変化しなかった.またカラゲニン群でIa陽性細胞が50%に出現し,F4/80強陽性細胞も増加した.
以上のことから,カラゲニン誤嚥性肺炎時の肺局所では集積する細胞は主として好中球で,その反応は活性化よりも数の増加が主体であり,肺胞マクロファージは活性酸素産生活性を減じ,Ia陽性の抗原提示細胞へと変化する可能性が考えられ,さらにカラゲニン群のDCFH酸化能の低下はミトコンドリア好気性代謝の低下であることが示唆された.

キーワード
誤嚥性肺炎, 食細胞機能, DCFH酸化能, 肺胞マクロファージ, 好中球

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