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日外会誌. 93(8): 842-850, 1992


原著

肝外閉塞性黄疸時における肝血行遮断に関する実験的研究
―全身ならびに肝血行動態,酸素需給動態におよぼす影響について―

東京女子医科大学 第2病院外科(指導:梶原哲郎教授)

大東 誠司

(1991年5月24日受付)

I.内容要旨
肝外閉塞性黄疸時における肝血行遮断の全身ならびに肝の血行動態,酸素需給動態におよぼす影響について実験的研究を行った.雑種成犬を用い,総胆管結紮・切離後2週間を経た黄疸犬15頭(黄疸群)と正常犬8頭(正常群)とを対象とした.肝血行遮断は肝動脈,門脈とを同時に20分間遮断し,血行遮断解除直後より解除後60分までの全身ならびに肝の血行動態,酸素需給動態の経時的な変動について観察した.両群を比較検討した結果,以下の結論を得た.
1. 肝血行遮断前の状態では黄疸群の肝動脈,門脈血流量は正常群より増加(p<0.01) しており,肝酸素需要も亢進していた.また全身の血行動態はhyperdynamic stateにあった.
2. 肝血行遮断解除後,正常群での心係数,全身への酸素供給量はいずれも低下していたが,黄疸群における変化率は正常群よりさらに低下 (遮断解除直後p<0.05) していた.
3. 肝血行遮断解除後,正常群での肝動脈血流量は増加し,逆に門脈血流量は遮断解除直後は低下したものの解除後15分以降は回復していた. これに対し黄疸群での肝血流量の増加率は正常群より低く (解除後30分以降p<0.05),門脈血流量の回復も遅延していた.
4. 正常群の肝酸素供給量は遮断解除直後には低下したものの,解除後15分以降では逆にわずかに増加しており,肝酸素消費量,肝酸素利用率については遮断解除直後から著明に増加していた. これに対し黄疸群の肝酸素供給量は遮断解除直後より全経過を通じて低下しており,肝酸素消費量,肝酸素利用率の増加率についても正常群と比較して著しく低下 (遮断解除直後p<0.05,解除後15分以降p<0.01) していた.
以上より,肝外閉塞性黄疸時においては肝血行遮断により,肝での酸素需給動態は正常時と比較して著しく破綻していることが明らかとなり,閉塞性黄疸時における肝血行遮断の危険性が示唆された.

キーワード
肝外閉塞性黄疸, 肝血行遮断, 肝血行動態, 肝酸素需給動態, hyperdynamic state

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