[書誌情報] [全文PDF] (498KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 93(8): 827-832, 1992


原著

肝細胞癌切除例における予後とPIVKA-IIとの関連性

大阪大学 医学部第2外科

左近 賢人 , 門田 守人 , 後藤 満一 , 金井 俊雄 , 梅下 浩司 , 請井 敏定 , 森 武貞

(1991年5月15日受付)

I.内容要旨
肝細胞癌切除例 (56例) において術前の血漿PIVKA-II (Protein induced by vitamin K absence or antagonist-II) 値と予後との関連性を検討した. PIVKA-II陽性例 (0.13AU/ml以上,33例) では陰性例 (23例) に比較して生存率が有意に低下していた.また,主腫瘍径が6cm以下の症例 (A群,43例) においても同様の結果が認められた. PIVKA-II陽性例では陰性例に比較し肝内転移,門脈内腫瘍栓が有意に多く,stageも進行していたが手術の治癒度については差異が認められなかった.背景因子の検討ではPIVKA-II陽性例では主腫癌径が大きく,また肉眼分類では塊状型が結節型に比し有意に多く,塊状型の全症例 (8例) がPIVKA-II陽性例であった.塊状型と結節型で病理学的予後因子と生存率を検討したところ塊状型症例では肝内転移,門脈腫瘍栓が有意に多く,早期の原病死例も多く認められた.一方,結節型症例 (48例) では生存率に関してPIVKA-IIの陽性,陰性例間に差異を認めなかった.今後,さらなる症例の集積と因果関係に関する検討が必要であるが, PIVKA-II陽性例では予後が悪く,その原因としてPIVKA-II陽性例に塊状型が多いことが考えられた.

キーワード
肝細胞癌, PIVKA-II, 予後因子, 塊状型, 肉眼分類


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。