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日外会誌. 93(8): 784-793, 1992


原著

開腹手術後の高アミラーゼ血症の検討
ー特に腹腔内排液中アミラーゼ測定の意義ー

獨協医科大学 第2外科(主任:田島芳雄教授)

佐藤 直毅

(1991年6月1日受付)

I.内容要旨
手術後の高アミラーゼ血症について検討を加え,特に腹腔内排液中アミラーゼ測定の意義について検索するため開腹手術例106例を対象とした.これらのうち高アミラーゼ血症を呈した症例を手術部位,膵侵襲の有無により3群に分けて分析し以下の結果を得た. 1. 開腹手術後の高アミラーゼ血症は39例 (36.8%) の症例に認められ,膵への侵襲が大きい術式ほど高アミラーゼ血症の発現率が高かった. 2. 高アミラーゼ血症例では,膵型アミラーゼ高値群よりも唾液腺型アミラーゼ高値群の占める割合が多かった. 3. 高アミラーゼ血症例のうち,膵型アミラーゼ高値群では唾液腺型アミラーゼ高値群に比し, リパーゼ,トリプシン,エラスターゼ1のいずれの膵酵素値も高い傾向を示し,特にエラスターゼ1値においては有意差を認めた.またPSTIも高値であった. 4. 腹腔内排液中アミラーゼ値は,膵への直接侵襲が大きい手術例,高アミラーゼ血症例,膵型アミラーゼ高値例で高値を示した. 5. 術後膵炎確診例は1例であり,術後の臨床経過と血液検査および術前後のCTによる画像診断によって診断された.
以上の結果より,膵に直接侵襲の加わる手術では膵由来アミラーゼの高値をきたす率が高く,腹腔内排液中アミラーゼ値が高値を呈する例はその時点で膵炎を発症している可能性が高く,または近い将来に膵炎を発来する危険性があると推測された.

キーワード
術後高アミラーゼ血症, 腹腔内排液中アミラーゼ, 術後膵炎, 血清膵酵素

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