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日外会誌. 93(8): 779-783, 1992


原著

動脈疾患術後及び消化器疾患術後多臓器不全症例の比較検討

浜松医科大学 第2外科
*) 浜松医科大学副学長 

今野 弘之 , 小谷野 憲一 , A.F.M. Matin , 青木 克憲 , 中村 達 , 馬場 正三 , 阪口 周吉*)

(1991年5月29日受付)

I.内容要旨
最近5年間に当科で発生した動脈疾患術後多臓器不全症例 (A-MOF) 8例,消化器疾患術後多臓器不全症例 (G-MOF) 14例の臨床的特徴を明らかとしその対策について検討した.手術時間,出血量,死亡率はA-MOF,G-MOFとで差を認めなかった.初発不全臓器はG-MOFでは肺が78.6%であるのに対してA-MOFでは全例術前より障害の認められた腎または心が初発であった.感染症の合併は共に80%以上で, Disseminated intravascular coagulation (DIC) の合併を共に半数を認めた. A-MOFは臓器不全発生後,肺感染症を合併する症例が多いのに対して, G-MOFでは腹腔内感染巣から肺不全に進展する症例が多数を占めた.起炎菌はA-MOF, G-MOF共にグラム陽性球菌感染が主体であった.術後感染症対策としてわれわれは施設独自の起炎菌の検出頻度および抗菌剤の感受性システムを作製し, これにもとづいて感受性のある可能性の高い抗苗剤の早期投与を試みている.消化管出血の合併はA-MOFで高率であり,発生原因もG-MOFが感染症および感染症の遷延によるDICが主因であったのに対し, A-MOFではconsumption coagulopathy (CC) が主因となって発生した症例が多数を占めた.われわれは最近ではheparinの術前投与によりCCの改善を試み,消化管出血の合併を防止している. またTonometerによる胃壁内pHの測定とそれにもとづいた酸素化perfluorochemicalsによる胃洗浄は上部消化管出血の予知と予防に有用であり, G-MOFの1例がこの治療により救命しえた.

キーワード
多臓器不全, 動脈瘤, Consumption coagulopathy, Tonometer

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