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日外会誌. 93(7): 748-752, 1992


原著

ラット膵移植における静脈血門脈ドレナージの移植膵生着および機能におよぼす影響

京都府立医科大学 第2外科

満尾 学 , 中井 一郎 , 小田 俊彦 , 岡 隆宏

(1991年5月23日受付)

I.内容要旨
臨床膵移植ではグラフトの静脈血を体循環にドレナージすることが多いが,本来膵の静脈血は門脈に還流した方がより生理的である.本研究では近交系ラットを用いて,門脈ドレナージを施した全膵十二指腸移植モデルを作成し,グラフトの生着と機能における差異を体循環ヘドレナージした場合と比較検討した.
ドナーとしてACI系雄性ラットを, レシピエントとしてLewis系雄性ラットを用いた同種移植では,移植後の血糖再上昇を指標とし,生着期間を比較した.その結果,門脈群: 8.9±1.3日,体循環群: 8.3±0.9日と差を認めず,単に静脈血を門脈にドレナージするだけでは,移植膵の生着を延長するに足りる免疫修飾は得られないと考えられた.
Lewis系雄性ラットを用いた同系移植では,移植後の体重および非空腹時血糖の経時的変化に加え,1, 2, 3カ月目にIV-GTT(0.5g/kg)を施行し,血糖曲線, K値,糖負荷前および負荷後8分の末梢IRI(immunoreactive insulin)値を測定し比較した.両群とも術翌日より3カ月以上にわたり正常血糖を示し,体重増加でも差は認められなかった. 1, 2, 3カ月目のK値(%/min)は,門脈群.1.5±1.0, 2.0±0.6, 2.3±0.7, 体循環群: 1.2±0.3, 1. 2±0.4, 1.8±0.5と門脈群の方が高かった.糖負荷前の末梢IRI値(μU/ml)は,正常ラット(7.9±1.6)に比較し,両群ともに高値を示したが,体循環群の1, 2, 3カ月目ではそれぞれ11.9±2.1, 11. 2±4.4, 22.8±16.2と漸増傾向を示したのに対し,門脈群では逆に24.1±6.8, 23.4±10.2, 15.1±10.5と早期の方が高かった.以上より血糖値のみでは明確な差異は認められなかったが, IRI値では門脈群の方がより正常に近く,脱神経化せざるを得ない移植膵の静脈血ドレナージ部位としては門脈を選択した方が長期的に良好な膵機能が得られる可能性が示唆された.

キーワード
膵移植, 門脈ドレナージ, 移植膵生着, 移植膵機能

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