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日外会誌. 93(6): 616-625, 1992


原著

胆道系における細菌付着の実験的検討

広島大学 医学部第1外科

瀬分 均 , 主任・松浦雄一郎教授  , 指導・横山隆教授 

(1991年3月22日受付)

I.内容要旨
胆道感染症を細菌の付着という新たなる観点より検討する目的で以下の実験的検討を行った.実験動物は家兎,試験菌は化膿性胆管炎患者胆汁から分離した大腸菌を比濁法にて約1×107cfu/mlの菌液に調整し用いた.観察は走査型電子顕微鏡にて行い,付着は倍率3,500倍,無作為50視野あたりの菌数として評価した.
(1)胆道感染成立因子としての細菌付着
対照群,および付着誘発因子群として黄疸群,小石挿入群,酸傷害群の計4群に分け,in vitroにて摘出胆囊粘膜上皮への細菌の付着を検討した.付着菌数(平均±標準偏差)は,菌液との接触を1時間とした際に対照群1.1±0.7個(n=7),黄疸群1.0±1.9個(n=7),小石挿入群0.8±0.9個(n=8),酸傷害群15.8±8.9個(n=10)であり,粘膜の傷害が著明であった酸傷害群でのみ有意に増加した(p<0.005).
つぎに,in vivoにて対照群,酸傷害群の2群を作製し,菌液との接触を6時間として検討した.付着菌数は,対照群3.5±5.9個(n=8),酸傷害群777.0±207.8個(n=5)であった.in vitroでの,菌液との接触を1時間とした際の付着菌数と比較すると,酸傷害群において有意な差が認められた(p<0.0005).
(2)胆道感染症の進展過程における細菌付着の意義
総胆管を結禁した家兎の胆囊より菌液を注入した胆管炎モデルにて検討した.胆管炎モデル(n=14)では,全症例に菌血症を認め,血中生菌数と血中エンドトキシン値は正の相関を示したが胆管壁付着菌数と血中生菌数とは負の相関を示した.
これら結果から
(1)上皮の傷害は細菌の付着誘発因子として意義付けられるとともに,付着は胆道感染成立因子となるものと推察された.
(2)胆道感染成立後における感染の進展を菌の拡散という点から評価すれば,胆管壁への細菌の付着は必ずしも関与しないことが示唆された.

キーワード
細菌付着, 胆道感染症, 大腸菌

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