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日外会誌. 93(6): 607-615, 1992


原著

大腸癌におけるDNA indexおよびBrdU標識率と臨床病理学的因子に関する検討

金沢大学 医学部第2外科(主任教授:宮崎逸夫)

竹川 茂

(1991年4月4日受付)

I.内容要旨
多くの癌においてDNA index (以下DI) およびS phase fractionは予後規定因子とされる.大腸癌におけるDNA indexおよびbromodeoxyuridine (以下BrdU) 標識率 (以下BLI) の有用性につきprospectiveに検討した.DIの測定には71例の大腸癌を用い,内47例にはin vitroでBrdUを標識し,DIとBLIを測定した.さらに内17例に対しては生検材料を用い切除標本との対比を試みた.切除標本では新鮮小腫瘍塊を4カ所より採取し,生検材料は術前に4個採取した.DIおよびBLIの測定は,抗BrdU monoclonal抗体を用い,問接免疫法にてBrdU/FITC標識を施し,DNA/BrdU二重染色後FCMにて行った.その結果,coefficient of variation (以下CV) は生検材料が4.2±1.3%と切除標本の5.4±1. 7%に比べ有意に良好であった(p<0.02). DIは正常大腸ではすべて1(DNA diploid)であった.大腸癌ではDIは1~2.36に分布し,DNA aneuploid (以下DA) は70.4% (50/71) に出現した.DNA ploidyやDIは他の因子とは相関を認めなかった.DIのheterogeneityは33.8% (24/71) に認められ,リンパ節転移陽性例に高率で,stageが進むにつれ高率となった.BLIは正常大腸では3.6±2.4%であり,大腸癌では10.6±6.5% (3.3~34.8%) で有意に高率であった.癌におけるBLIは高分化に比べ中・低分化で高率であったが,stageなど他の因子とは独立していた.DIとBLIとは有意な正の相関を示した(r=0.47, p<0.001).DI heterogeneityを示す症例をのぞけば,生検材料と切除標本のDIはよく一致した(r=0.99, p<0.001).また両者のBLIにおいても有意な相関がみられた(r=0.69, p=0.002).以上の結果から,大腸癌におけるDIとBLIはstageとは独立した因子であり,生検材料を用いた測定が可能であり,再現性が良好であることが示された.DIおよびBLIが4個の生検で測定可能であることから,術前の内視鏡時に測定し治療法選択の補助手段として有用であることが示唆された.

キーワード
DNA index, bromodeoxyuridine labeling index, flow cytometry, 大腸癌

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