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日外会誌. 93(5): 494-504, 1992


原著

上皮小体機能亢進症におけるsecretinおよびthyrotropin-releasing hormoneの膵機能に及ぼす影響について

信州大学 医学部第2外科学教室(指導:飯田 太教授)

山岸 喜代文

(1991年3月11日受付)

I.内容要旨
近年,臓器相関に関する研究が進歩し,膵と上皮小体との機能的関連が注目されるようになった.またTRHは膵にも高濃度に含まれており,膵機能との密接な関係が推測されている.今回,原発性および続発性上皮小体機能亢進症(I゜HPT, II゜HPT)および上皮小体摘出後2年以上経過した原発性上皮小体機能亢進症(I゜HPT postop)における膵機能,ならびにTRHの膵に及ぼす影響について健常者と比較検討し,以下の結果を得た.
1) Secretin負荷開始30分後から30分間の膵外分泌については膵液量, amylase分泌量および重炭酸塩分泌量はI゜HPT群および対照群に比較してII゜HPT群において高値を示したが, I゜HPT群と対照群の間には差がみられなかった.
2) TRH負荷によりI゜HPT群およびII゜HPT群では膵液量, amylase濃度,同分泌量および重炭酸塩分泌量は抑制されたが,対照群では不変であった.
3)血清insulin, glucagonおよびsecretin値はI゜HPT群およびII゜HPT群では対照群に比較して高値であり,血清glucagonおよびsecretin値はI゜HPT群に比較してII゜HPT群で高値であった.SecretinおよびTRH負荷により, これらの消化管ホルモンは明らかな変動を示さなかった.
4) I゜HPT postop群における膵外分泌はsecretinあるいはTRH負荷によりI゜HPT群とほぼ同様の変動傾向を示した.膵内分泌に関しては血清insulin, glucagonおよびgastrin値はI゜HPT群と差はみられなかったが,血清secretin値は上皮小体摘出後低下した.
以上の結果より, II゜HPT群において膵外分泌能は亢進しており,その原因として高secretin血症の関与が推測された.
TRH負荷によりI゜HPT群およびII゜HPT群の膵外分泌は抑制され,その抑制作用はTRHの膵腺房細胞への直接作用によることが示唆された.

キーワード
膵機能, 上皮小体機能亢進症, secretin, thyrotropin-releasing hormone, 膵外分泌抑制


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