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日外会誌. 93(5): 462-474, 1992


原著

胸部食道癌のリンパ節転移に関する実験的研究
―家兎食道癌モデルにおけるリンパ節転移と微粒子活性炭による
リンパ流の変化について―

久留米大学 医学部外科学第1講座(主任:掛川暉夫教授)

末吉 晋

(1991年3月25日受付)

I.内容要旨
胸部食道癌のリンパ節転移の実態を解明する目的で,家兎を用いた食道癌モデルを作成し, リンパ節転移と食道リンパ流について検討した.食道癌モデルは可移植性腫瘍のVx2細胞を家兎食道に経内視鏡的に移植して作成し,正常家兎食道および食道癌モデルの腫瘍部に徴粒子活性炭(CH44)を注入してリンパ流を直接観察し,解剖によりリンパ節転移の有無を肉眼的病理組織学的に詳細に検討した.上部食道癌モデル30羽では77%にリンパ節転移がみられ,左右の胸部気管リンパ節は共に約50%の転移を認め,腫瘍部よりのリソパ流もそこに集中したが,腹部リンパ節への転移や腹部にまで直接到達するリンパ流は認めなかった.一方,頸部へのリンパ節転移は約13%と比較的高値を示し,食道リンパ流でみても食道に沿って頸部にまで上行し,その後,縦隔最上部に向かって下降する流れや気管の前面を横切る流れを認めた.中下部食道癌モデル40羽では88%にリンパ節転移を認め,左右の胸部気管リンパ節転移率はそれぞれ75%と53%と著明に高く,腹部においても噴門リンパ節に25%の転移を認めた. リンパ流でみてもそれらのリンパ節に向かう上行,下降のリンパ流とともに,更に縦隔最上部リンパ節や左胃動脈リンパ節にまで達するリンパ流を認めたが,頸部に達する経路や腹部大動脈周囲に達する経路は認めず,頸部へのリンパ節転移率も約5%と低く,腹部大動脈周囲へのリンパ節転移は認めなかった.上縦隔リンパ節転移率の左右差の比較では有意差はなく,ボタローリンパ節から左中縦隔リンパ節にも転移を認め,より徹底した左側縦隔郭清の必要性が示唆された.

キーワード
胸部食道癌, リンパ節転移, 家兎食道癌モデル, Vx2腫瘍細胞, リンパ流

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