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日外会誌. 93(4): 437-441, 1992


症例報告

食道胃静脈瘤にて手術を施行した肝外門脈栓塞,アンチトロンビンIII減少症の1例

千葉大学 医学部第2外科

添田 耕司 , 神津 照雄 , 小野田 昌一 , 磯野 可ー

(1990年11月28日受付)

I.内容要旨
アンチトロンビンIII(ATIII)減少症を伴った肝外門脈栓塞症に食道静脈瘤の手術を施行した1例を経験した.症例は23歳女性.食道静脈瘤出血のため他院で硬化療法をうけていたが,腹水,黄疸出現増強して,小腸広汎壊死となり広汎腸切除をうけた.その後肝外門脈栓塞症を指摘され,食道静脈瘤増悪し手術のため当科に入院した.入院時のATIII活性は46%で,彼女の父,母,姉は90%以上であった.経腹的食道粘膜離断術兼脾摘出術を施行し,摘出脾重量は1,000gであり,肝生検で慢性活動性肝炎と診断された.周術期にはATIII剤1,500単位/日を投与し, ATIII活性は,術中術後とも70%を越え,その後も正常範囲に維持された.術後に末梢血小板数が300万/mm3となったが,深部静脈血栓症は出現せず,食道静脈瘤も退縮し,術後76病日退院した. ATIII減少症の周術期には, ATIII剤を投与しATIII活性を70%以上に保つことで,深部静脈血栓症の予防が可能と思われた.

キーワード
アンチトロンビンIII減少症, 肝外門脈栓塞症, 血小板増多症


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