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日外会誌. 93(4): 429-433, 1992


原著

四肢の慢性閉塞性動脈疾患に対する高気圧酸素治療

金沢大学 医学部第1外科

浦山 博 , 竹村 博文 , 笠島 史成 , 土田 敬 , 片田 正一 , 渡辺 洋宇

(1991年3月5日受付)

I.内容要旨
四肢の慢性閉塞性動脈疾患症例50例に対する高気圧酸素治療 (HBO) の臨床成績を検討し,また,経皮的酸素濃度 (TcPO2),過酸化脂質, superoxide dismutase (SOD) を測定した.症例の疾患は閉塞性動脈硬化症26例, Buerger病23例,膠原病1例であり,症状は壊死・潰瘍30例,安静時疼痛6例,壊死部感染2例,切断部感染2例,肢趾切断部位治癒遅延8例,骨折部位治癒遅延2例であった. HBOは2~3絶対気圧で3~40回,平均12.7回施行した.併用療法としてPGE1投与を46例に施行し,交感神経遮断を41例に施行した.壊死・潰瘍症例のうち2ATA加圧の11例で患肢の足背にてTcPO2をHBO開始10分前からHBO中, HBO終了後10分まで測定し,過酸化脂質, SODを第1回目のHBO開始前,第1回目のHBO終了直後,最終回のHBOの翌日に測定した.
副作用として8例に耳痛を認めた.壊死・潰瘍例30例では治癒16例,改善13例,不変1例であった.安静時疼痛の6例中, 5例において疼痛が消失したが1例では不変であった.感染例では全例で治癒をみた.肢趾切断部位治癒遅延8例では7例で治癒をみたが1例で再切断を施行した.骨折部位治癒遅延2例では共に骨癒合をみた. TcPO2はHBOにより著明に上昇し終了後もしばらくは高値であった.過酸化脂質, SODはHBOにより有意の変化を示さなかった.四肢の慢性閉塞性動脈疾患に対するHBOはその病態が組織脱落のみならず,疼痛,感染,創治癒遅延においても有効であった. PGE1投与や交感神経遮断を併用することにより末梢においても高いTcPO2が得られた.副作用として耳痛があったが重篤なものはなく,また,活性酸素は誘導される抗酸化作用により中和されるものと考えられた.

キーワード
慢性閉塞性動脈疾患, 高気圧酸素治療, 経皮的酸素濃度, 過酸化脂質, スパーオキサイド・ジスムターゼ

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