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日外会誌. 93(4): 363-368, 1992


原著

多核白血球による術後活性化マクロファージの機能調節

山形大学 医学部第2外科

倉岡 節夫 , 鷲尾 正彦 , Gere S. diZerega

(1991年3月6日受付)

I.内容要旨
手術創には,マクロファージの動員に先行して急速かつ一過性の大量の多核白血球(PMN)の侵入が認められる. この研究の目的は,術後急性期のマクロファージの機能に対するこれらPMNの影響を解明するものである. ウサギの小腸を部分切除再吻合した後,腹腔浸出細胞を回収しパーコールにて分離した.術後種々の時点で回収したPMNを4時間培養しその培養液を保存した.同様に術後種々の時点で回収したマクロファージにこのPMN培養液を添加して培養した後,マクロファージのスーパーオキサイドアニオン (O2-) 産生と,培養液中に分泌されるプロテアーゼ及びプロテアーゼインヒビター活性を測定した.O2-活性は術後2時間で既に急速な上昇を示し,術後6時間で最高値に至り,以後術後24時間までに漸減した.術後6時間, 12時間に回収したマクロファージのO2-産生に対して,術後6時間のPMN培養液は抑制的に作用し,術後12時間, 24時間のPMN培養液は促進的に作用した.術後24時間に回収したマクロファージ培養液中のプラスミノーゲンアクティベータ(PA)活性分泌は, PMN培養液を添加すると上昇したが,術後12時間以内のマクロファージに対しては,いかなる時期のPMN培養液も影響を与えることはなかった. PAインヒビター(PAI)活性は術後2時間で低下し,その後徐々に上昇したが, PMN培養液はマクロファージのPAI活性になんら影響を与えなかった. このように術後マクロファージが創傷治癒の中心的役割を遂行するために段階的に分化していく過程で, PMNが分泌する可溶成分因子は,術後マクロファージの代謝動態を調節していると考えられた.

キーワード
スーパーオキサイドアニオン, プロテアーゼインヒビター, 術後マクロファージ, 多核白血球(PMN)

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