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日外会誌. 93(3): 322-327, 1992


原著

末梢動脈血行再建術後の下腿浮腫の解明
-RI リンパ節シンチと末梢静脈圧からの検討-

山口大学 医学部第1外科

大原 正己 , 瀬山 厚司 , 秋本 文一 , 中村 丘 , 若松 隆史 , 善甫 宣哉 , 江里 健輔

(1991年1月30日受付)

I.内容要旨
血行再建後の下腿浮腫は厄介な合併症の一つである.今回血行再建肢に対し,術前,急性炎症が消失した術後3~4週目および遠隔期浮腫消失時に血清総蛋白,アルブミン, BUN, クレアチニン値,Ankle Pressure Index, 末梢静脈圧およびRIリンパ節シンチを測定し,術後患肢浮腫の病態を考察した.対象は血行再建を施行したASO症例12例, 16肢.全例男性.年齢は55歳から82歳,平均69歳.術前のFontaine分類ではII度14肢, III度1肢, IV度1肢であった.手術術式では全例にバイパス術を施行した.すなわち,大腿動脈より中枢側再建3肢,それより末梢側再建11肢および大動脈ー大腿ー下肢動脈再建2肢であった.術後バイパス路は全例開存し,患者の浮腫状態は軽症から重症の4群に分類した.末梢静脈圧およびRIリンパ節シンチは安静臥位および立位でそれぞれ測定された.
血清総蛋白,アルブミン値,BUN,クレアチニン値およびAPI値と下腿浮腫の程度との間には有意な相関はなかった.術前,術後および遠隔期における下肢静脈は臥位でも,立位でも有意に変化せず,また下腿浮腫の程度と有意に相関しなかった. RIリンパ節シンチのカウント量は臥位でも,立位でも術前に比べ,術後有意に高値となった.下腿浮腫の程度との関係では術後カウント量は臥位では有意な関係はなかったが,立位では軽症例ほど高値となり,重症になるほど低値となった.遠隔期のカウント量は立位では重症例は術後に比べ増加し,逆に軽症例は減少した.以上より下腿浮腫の原因は血行再建後に著しく増加したリンパ流を手術により損傷されたリンパ管が処理不能となることにより発生すると考えられた.

キーワード
ASO, バイパス術, 下腿浮腫, RI リンパ節シンチ

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