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日外会誌. 93(3): 314-321, 1992


原著

手術侵襲の末梢静脈機能に及ぼす影響に関する研究

浜松医科大学 第2外科

石原 康守 , 阪口 周吉 , 石井 馨

(1991年1月16日受付)

I.内容要旨
手術侵襲が生体に加わった時,末梢静脈機能がどう変化するかを検討するため,外科手術施行症例28例の術後の末梢静脈機能の変化をGa-Inストレンゲージプレチスモグラフィーを用いて測定し,同時に中心静脈機能を17例に,尿中カテコールアミン分画を24例に測定した.その結果以下の結論を得た.
1. 健常上肢の静脈機能をGa-Inストレンゲージプレチスモグラフィーを用いて測定したところ,加齢とともに最大静脈還流量(MVO)が動脈血流入量とともに増加する傾向にあったが,性差,左右差はなかった.
2. 外科的手術侵襲により末梢静脈機能が低下したが,測定部位として下肢よりも上肢のほうが変化がとらえやすかった.
3. 侵襲が大きい大手術では,小手術群よりも有意に術後のMVO(64.87±29.33 vs 113.52±49.87ml/min/dl),静脈拡張度および動脈血流入量が低下した.
4. 尿中カテコールアミンのうちアドレナリンとノルアドレナリンは大手術群の術後に高値を示した.術後尿中アドレナリン高値例では術後のMVOは有意に低下(67.74±33.80ml/min/dl)したが,両者間には必ずしも相関が認められなかった.しかし術後の尿中ノルアドレナリンが高値である程,術後MVOは低下しており,両者間に負の相関が認められた.
5. 術後合併症のなかった12例において,スワンガンツカテーテルにより測定した中心静脈機能(RA, PWP, PA)が正常範囲内であったにもかかわらず, MVO, 動脈血流入量はすでに低下しており,中心静脈機能が変化するより以前に,末梢静脈還流量が低下するものと考えられた.
6. 術後の末梢静脈還流量の低下の原因として,手術侵襲によって分泌が増加したカテコールアミンによる血管の能動的収縮と,血管外圧の増加が考えられた.
7. ストレンゲージプレチスモグラフィーによる無侵襲の末梢静脈還流量測定は,手術侵襲の程度,循環動態の変化を早期に推定する良い臨床的パラメーターとなりうるものと考えられる.

キーワード
手術侵襲, 末梢静脈機能, ストレンゲージプレチスモグラフィー, 尿中カテコールアミン, 中心静脈機能

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