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日外会誌. 93(3): 306-313, 1992


原著

下肢閉塞性動脈硬化症に対するTransluminal Balloon Angioplasty後の血管内視鏡による遠隔期開存性の判定に関する研究

1) 奈良県立医科大学 第3外科
2) 清恵会病院 外科

井上 毅1) , 北村 惣一郎1) , 河内 寛治1) , 大山 朝賢2)

(1990年12月27日受付)

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症に対するTransluminal Balloon Angioplasty (TBA)の効果判定には選択的血管造影が一般的方法であったが, これに血管内視鏡所見を加味することで更に正確で有用になるものと考えた.そこで本研究では下肢ASO16症例18肢に対してTBAを行い, TBA直後の血管内腔を血管内視鏡で観察し,その分類とSCORE化を試みた.
血管内視鏡所見の分類では, I. 内膜剝離, II. 拡張不全, III.内壁断裂, IV. 壁在血栓, V. 石灰沈着の5つの血管内視鏡所見に分類し,更にそれぞれの所見に関して,全く認めなかったものを0,1箇所に認めたものを1, 2箇所以上で認めたものを2とSCORE化を行い, この臨床的意義を術後遠隔期の開存率との関係から検討した.
開存率は術後6カ月未満の早期で63%(10/16),術後6カ月以上の遠隔期で31%(4/13)であった.5つの所見のうち,拡張不全(p<0.01) と内壁断裂(p<0.05)を認めた血管の術後遠隔期開存率は低下していた.合計SCOREの検討では,術後早期において開存群3.4±1.2に対し閉塞群6.2±1.2,術後遠隔期においても開存群3.3±1.5に対し閉塞群6.0±1.1と,何れの時期でも共に高SCOREの症例ほど開存率は低下した(p<0.01).術後早期に開存していた10肢のうち合計SCOREが5以上有していたものはわずか1肢10%のみであった.それに対し閉塞していた6肢のうち合計SCORE5以上有していたのは全肢(100%)と多かった(p<0.01).術後遠隔期においても,開存していた4肢のうち内視鏡SCOREが5以上有していたものは無く(0%),逆に閉塞群9肢のうち内視鏡SCOREが5以上有していたものは全肢(100%)と明らかに多かった(p<0.01).従ってTBA後の血管内視鏡所見により術後遠隔期開存性の判定が可能であり,合計SCOREが高い症例,特に拡張不全や内壁断裂を認めたり, 5点以上と高い合計SCOREを示した血管の開存性は低く, このような場合はバイパス術への変更,或いは術後の十分な抗凝固療法と慎重な経過観察が必要になると考えられた.

キーワード
血管内視鏡, Transluminal balloon angioplasty, 閉塞性動脈硬化症, 血管内視鏡スコア, 血管開存率

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