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日外会誌. 93(3): 241-247, 1992


原著

超音波検査による食道癌患者の術前栄養評価
-胸鎖乳突筋・腹直筋・大腿四頭筋断面積の計測より-

鹿児島大学 医学部第1外科

白尾 一定 , 吉中 平次 , 草野 力 , 馬場 政道 , 福元 俊孝 , 愛甲 孝 , 島津 久明

(1991年1月16日受付)

I.内容要旨
食道癌患者の術前栄養評価法の1つとして,超音波診断装置による骨格筋断面積計測の意義を検討した.対象は食道癌男性患者83例と対照群とした肺癌男性患者22例である.全例において胸鎖乳突筋と腹直筋の各断面積を超音波画像上で計測し,その和を身長で除した値を筋肉係数(muscleindex, MI)として算出した.また,右開胸開腹による胸部食道癌切除例のうち著明な術後合併症を認めなかった49例を, MI値5.0以上のGrade I, 5.0未満3.5以上のGrade II, 3.5未満のGrade IIIの3群に分類した.さらに,食道癌患者12例と肺癌患者11例では,大腿四頭筋内側1/4の断面積を術前後で計測した.
MIやGrade分類について,各種の栄養学的バラメータとの関係,術前後でのrapidturn over proteinやフィブロネクチンあるいは大腿四頭筋断面積の変化を検討した.
MIは%上腕周囲長(r=0.52),%上腕筋囲(r=0.51),%理想体重(r=0.46),クレアチニン身長係数(r=0.4)およびBuzbyらのprognosticnutritional index Cr= -0.41) との間に有意の相関を示し,術前栄養評価の指標として有用であった.体重減少率,%皮下脂肪厚,%上腕筋囲および%理想体重は各Grade間で差異がみられ, IとIIIの2群間に有意差を認めた.また,プレアルブミンやトランスフェリンの術後の回復はIII群で有意に遅延し,フィブロネクチンでもその傾向にあった.さらに,術後1カ月目の大腿四頭筋断面積では, I, II群や肺癌患者に比べIII群で有意に小さく,術前に対する比率も低値であった.これらの結果は, MIによる術前栄養状態のGrade分類の可能性と意義を支持するものであった.
本法は,食道癌患者に対する術前超音波検査と同時に比較的簡単に行えるが,さらに簡略化して大腿四頭筋内側1/4の断面積におけるMIを算出することもでき,それは術前後を通じた栄養状態の評価にも有用と思われる.

キーワード
食道癌患者の術前栄養評価, 超音波検査, 骨格筋断面積, 筋肉係数 (muscle index)

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