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日外会誌. 93(3): 232-240, 1992


原著

内視鏡下生検腫瘍を用いた,制がん剤感受性試験の基礎的,臨床的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)研究部門

河野 和明

(1991年1月17日受付)

I.内容要旨
制がん剤感受性試験はがん化学療法の効果を高めるために広く行われているが,臨床的にはすべて手術時摘出新鮮腫瘍が用いられている.そこで,臨床応用の幅を広げる目的で内視鏡下生検腫瘍を用いた感受性試験を,細胞内のAdenosineTri phosphate (ATP)量を指標としたATP法にて行いその有用性について基礎的,臨床的に検討し,以下の結果を得た.
(1)腫瘍細胞ATP量は腫瘍細胞数と正の相関(p<0.01)を示し一次回帰直線で表示された.
(2)腫瘍細胞1×102個のATP量は1×103個以上のATP量に比べ測定誤差が大きく,1×103個以上では誤差10%以内で,安定した測定が可能であった.
(3)経時的変化をみると, ATP量は1×103個以上で培養48時間より増加傾向を示し72~96時間にプラトーを示したが, 1×102個においては増加傾向が認められなかった.
(4)生検個数3, 5, 7個におけるATP量の測定値より腫瘍細胞数を算出すると, 2.8~23.8×103個といずれも1×103個以上の細胞数が推定された.
以上の某礎的実験結果より,内視鏡下生検腫瘍を用いたATP法による感受性試験が可能と考え,臨床的には生検個数7個, 72時間培養として食道がん31例,胃がん18例の計49例を対象として,生検材料を用いた制がん剤感受性試験を施行した.本試験の評価可能率は93.8%(食道がん93.5%,胃がん94.4%) であった.食道がんにおいて,術前に化学療法を行った切除例25例中19例,非切除例6例中3例に臨床効果が得られ,臨床効果との相関率は各々73.7%,66.7%であり,全体で72.0%であった.以上の結果より,内視鏡下生検腫瘍を用いたATP法による制がん剤感受性試験は臨床応用可能と思われた.

キーワード
制がん剤感受性試験, 内視鏡下生検, ATP法

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