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日外会誌. 93(2): 177-182, 1992


原著

鈍的脾外傷に対する脾修復術の適応

1) 東海大学 医学部救急医学
2) 東海大学 第2外科

猪口 貞樹1) , 田島 知郎2) , 池田 正見1) , 中島 功1) , 正津 晃1) , 三富 利夫2)

(1990年12月19日受付)

I.内容要旨
複雑ではあるが修復可能な外傷性脾損傷に対する脾修復術の手術危険度と適応を明らかにするため,脾外傷自験例73例のうち,合併損傷のない中等度の脾損傷(深い実質損傷,部分的挫滅)手術例19例を検討し,積極的に脾修復術を行った10例(脾縫合6例,脾部分切除4例)と摘脾を行った9例について手術危険度および術後脾機能を比較した.残存脾組織量が40%以下の症例は修復不能として対象より除外した.
中等度の単独脾損傷に対する脾修復術は,摘脾に比して平均約50分長い手術時間を要したが,出血量,合併症,予後に有意の差はなく,手術危険度は増大させないと思われた.また術後の末梢血血小板数,血清IgM,99mTc標識ヒト赤血球スキャンなどの所見から,修復術後の脾機能は良好と考えられた.
従ってこのような症例は脾修復術の適応と考えられるし,合併損傷のある症例に対しても手術時間延長が全身状態及び予後に与える影響と,摘脾後感染症の発生率,死亡率を勘案して術式を決定すればよいものと思われる.

キーワード
脾外傷, 脾縫合術, 脾部分切除術, 摘脾後敗血症


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