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日外会誌. 93(2): 162-168, 1992


原著

胆道系術後の感染発症要因と予防

名古屋市立大学 医学部第1外科(主任:由良二郎教授)
員弁厚生病院 外科
知多厚生病院 外科
刈谷総合病院 外科

品川 長夫 , 由良 二郎 , 石川 周 , 真下 啓二 , 犬飼 昭夫 , 岩井 昭彦 , 大久保 憲

(1990年12月10日受付)

I.内容要旨
胆道系手術症例を対象とし,術後感染症に対するhigh risk群とlow risk群を区別し,術後感染予防のための化学療法について検討した. high risk症例とは,緊急手術,黄疸,肝硬変,悪性腫瘍,糖尿病, 70歳以上の高齢者,術前10日以内の胆道感染症,胆道系手術の既往,総胆管切開あるいは腸管切開などのrisk factorの何れかを有するものとした. low risk症例とはrisk factorを持たないものとした. low risk症例には感染予防としてcefotiamを投与 (CTM-L群) した. high risk症例は無作為に2群に分け, 1つにはcefotiamを投与 (CTM-H群) し,他方にはcefmenoximeを投与 (CMX-H群) した.術後感染症は, CTM-L群で190例中4例 (2.1%) に, CTM-H群で71例中8例 (11.3%) に, CMX-H群で71例中11例 (15.5%) にみられた. low risk群における術後感染発症率は,high riskの2群と比較し有意 (p<0.01) に低率であったが, high riskの2群間では有意の差はなかった.術後感染症のみられた23例中1例の不明例を除き22例中20例 (90.9%) は胆汁中細菌が陽性であった.また,胆汁中細菌と術後感染起炎菌が一致する率は60.0%と高率であった.手術時の胆汁およびwound swabより細菌が分離される率は, CTM-L群ではhigh riskの2群より有意に低い細菌分離率であったが, high riskの2群間では有意差はなかった. risk factor別にみた胆汁中細菌陽性率は,胆道系手術の既往と黄疸でいずれも75.0%ともっとも高く,次いで術前10日以内の胆道感染症 (72.7%),総胆管切開または腸管切開 (72.1%),悪性腫瘍 (70.0%) の順であった.これらのrisk factorの存在は,いずれも術後感染発症率との間に有意の関連 (p<0.05) がみられた.胆道系手術後の感染予防には胆汁中細菌をカバーする薬剤が適応となると考えられた.

キーワード
術後感染予防, 胆汁中細菌, 胆道系手術, cefotiam, cefmenoxime

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