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日外会誌. 93(2): 158-161, 1992


原著

X線CTによる脾・肝容積比の測定とその臨床的意義

関西医科大学 外科

上辻󠄀 章二 , 山村 学 , 駒田 尚直 , 奥田 益司 , 山道 啓吾 , 日置 紘士郎 , 山本 政勝

(1990年12月15日受付)

I.内容要旨
肝切除に際し,術前に肝予備能つまり肝硬変の重症度を評価し把握しておくことは重要である.われわれは,画像面より肝硬変重症度を評価する目的で, X線Computed Tomography (CT) 画像を用いて肝・脾容積を測定し,脾・肝容積比 (S/L ratio) を算出して,肝硬変重症度評価を試みた.
過去3年間における当教室の肝硬変合併肝癌症例42例を対象にX線CTよりS/L ratioを算出し,肝予備能の指標としてICGR15, 血清ビリルビンCT-Bil),血清アルブミン(Alb),およびコリンニステラーゼ活性(Ch•E) の4 項目との相関性を検討した結果, S/L ratioとICGR15との間には, r=0.870 (p<0.001) の相関があり, ICGR15= S/L ratio×55.849 + 6.004の関係を認め, S/L ratioとT-Bilの間には, r=0.719 (p<0.001) の相関があり, T-Bil=S/L ratio×2.674+0.530の関係を認めた.S/L ratioとAlbの間には,r=-0.691 (p<0.001) の負の相関があり, Alb=-2.656×S/L ratio+4.363の関係があった. S/L ratioとCh・Eの間には, r=-0.606 (p<0.001) の負の相関を認め, Ch•E= -4,928.57×S/L ratio+4,387.84の関係が認められた.以上より, S/L ratoは肝予備能指標としての4項目と相関関係が得られた.
肝硬変重症度評価に当たって,肝硬変における肝容積の縮小が有効肝血流量の低下に起因し, この有効肝血流量の減少に加えて,門脈圧亢進の因子が加わって脾容積の増大も考慮に入れる必要がある.S/L ratioの測定は,有効肝血流と門脈圧亢進の因子を反映した新しい肝機能評価法として有用であると考えられた.

キーワード
Computed Tomography, 脾・肝容積比 (S/L ratio), 肝硬変重症度評価, 肝予備能

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