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日外会誌. 93(2): 133-138, 1992


原著

静脈侵襲よりみた大腸癌の血行性転移の特性

1) 東北大学 医学部第1外科
2) 東北大学 第2病理

斉藤 善広1) , 大内 明夫1) , 後藤 慎二1) , 額田 泰志1) , 溝井 賢幸1) , 松野 正紀1) , 大谷 明夫2)

(1990年11月26日受付)

I.内容要旨
血行性転移に及ぼす静脈侵襲の影響を検討するため予後の明らかな同一深達度(ss• s, a1 • a2)の大腸癌症例の静脈侵襲形態を詳細に検討した.術中肝転移症例A群4例,術後血行性転移再発症例B群3例,非再発症例C群6例の合計13例を対象とし,切除標本を全割,連続切片を用いそれぞれHematoxylin-Eosin, Elastica-Masson染色を行い鏡検した.静脈は口径50μm以上の可能な限り全静脈を検索,口径別に50~100μm, 100~200μm, 200μm 以上の3 群に,また静脈の存在部位によりm•smv, pmv, ss•s (a1 •a2) vの3群に分類した.各症例の静脈侵襲率 (VIR) は検索した全静脈に占める侵襲静脈の比率で現した.各群のVIRはA群が平均7.5%, B群が6.3%, C群が2.2%とA, B群とC群間にそれぞれ有意差を認めた.層別検索ではA群はm• sm, ss • s (a1 • a29層における,またB群はSS・s(a1 • a2)層におけるVIRがそれぞれC群より有意に高値を示した.口径別検索ではA群は200μm以上の大口径静脈, B群は200μm以下の中,小口径静脈のVIRがそれぞれC群に較ベ有意に高値を示した.また各症例ごとに腫瘍中央部の1ないし2切片によるv判定とVIRを比較すると, v判定は腫瘍全体の静脈侵襲率と必ずしも一致するものではなかった.以上より血行性転移成立とある一定数以上の静脈侵襲はほぼ平衡な関係にあり,術中転移例と再発例は平均静脈侵襲率にはほとんど差を認めないことより再発例は術中に触知できない転移巣の存在を示唆するものと思われた.また術中転移例と再発例はss•s (a1 •a2) 層における侵襲静脈の性状に差を認め,同層における200μm以下の中小口径静脈の高率な侵襲が再発を予知させるものと思われた.

キーワード
静脈侵襲, 大腸癌, 術中肝転移, 血行性転移再発

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