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日外会誌. 93(1): 71-80, 1992


原著

ヒト乳癌細胞株 MCF-7を用いた効果的な抗癌剤投与法に関する基礎的研究
―細胞回転からみた細胞増殖抑制効果の検討―

福島県立医科大学 外科学第2講座(主任:阿部力哉教授)

鈴木 正人

(1990年12月15日受付)

I.内容要旨
ヒト乳癌細胞株MCF-7に対する抗癌剤(MTX, 5FU, ADR, MMC, VCR)および内分泌療法剤(TAM)の細胞の増殖抑制効果について濃度と接触時間の違いから検討し,さらにFCMを用いてこれら薬剤の細胞回転に与える影響を解析することによって,より効果的な投与方法を検討した.MTX, 5FU, ADR, MMC, VCR, TAMはいずれもMCF-7に対して細胞の増殖抑制効果を有していた.
各種薬剤の抗癌効果と接触時間および濃度との関係をみると,MTXでは細胞の増殖抑制効果は接触濃度にはほとんど依存せず接触時間に依存した(time dependent). 5FU, MMC, VCRはそれぞれ程度の差はあるが濃度および接触時間の両方に依存した(time and dose dependent). ADRの効果は濃度にのみ依存した(dose dependent).
細胞動態に与える影響としてはMTXがS期に, TAMはG0 G1期に,他の薬剤はG2M期に細胞を蓄積させた.
2種の抗癌剤を併用した場合,最初にS期に作用するMTXを接触させ,その後にG2M期に作用する薬剤を接触させた場合に,最も細胞の増殖を抑制できた.
TAMとMMCの併用では,先にG2M期に作用するMMCを接触させ,その後にG0 G1期に作用するTAMを接触させた場合に最も強い効果が得られた.
TAMとMTXの併用では,TAMを先に作用させ,その後にS期に作用するMTXを作用させた時に最も強い細胞の増殖抑制効果が得られた.
以上より,各種薬剤を併用する場合,薬剤の作用機序を考慮し,cell kinetics-directedな投与法により,細胞増殖抑制効果を単一薬剤よりも増強することが可能であることが示唆された.

キーワード
MCF-7, 抗癌剤, タモキシフェン, 細胞回転, 細胞培養

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