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日外会誌. 92(12): 1713-1718, 1991


原著

肺癌のin vitro制癌剤感受性試験における線維芽細胞の影響について

*) 名古屋大学 医学部胸部外科
**) 県立愛知病院 外科

榊原 正典*) , 今泉 宗久*) , 内田 達男**) , 阿部 稔雄*)

(1990年11月8日受付)

I.内容要旨
肺癌切除標本を用いたin vitro制癌剤感受性試験には線維芽細胞が混在するため,その影響と除外方法を検討した.用いた細胞は肺癌継代培養細胞14種類と肺癌切除標本より得られた線維芽細胞14種類である.これらの細胞を1対1の割合で混合し,適宜培養後制癌剤を投与し肺癌細胞単独と線維芽細胞混在時の感受性を比較した.制癌剤感受性はMTT colorimetric assay法でSD活性を測定することにより求めた.結果として線維芽細胞のSD活性は肺癌細胞の1/2から1/4であった.線維芽細胞の制癌剤感受性はCDDP,MMC,5-FUに対しては肺癌細胞とほぼ同等であったが,ADMとVP-16に対しては肺癌細胞より高かった.肺癌細胞と同様に線維芽細胞の感受性にもheterogeneityが認められた.
肺癌細胞に線維芽細胞を混合し3日間培養後CDDPを加えた場合,61%に感受性に影響がみられた.また線維芽細胞培養液(C.M)を加えた場合には10%に感受性の亢進がみられた.このC.M中の感受性亢進因子は100GYの照射では影響を受けないが,10分間の煮沸で失活した.この因子は一部の肺癌細胞のG0・G1期を刺激し増殖を促進させ,EGFの可能性が高いと思われたが同定はできなかった.しかしこれらの影響は線維芽細胞あるいはC.M混合時に制癌剤を同時に投与することにより除外することが可能であった.
以上より切除標本を用いたin vitro制癌剤感受性試験においては,線維芽細胞の直接的および間接的影響を最少限にするために,腫瘍細胞を採取後培養期間を置かずに制癌剤を加え,感受性試験を行う必要があった.

キーワード
制癌剤感受性試験, 線維芽細胞, 肺癌, 培養細胞


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