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日外会誌. 92(12): 1694-1699, 1991


原著

甲状腺癌の気管浸潤に対する切除範囲の検討

横浜市立大学 医学部第1外科(主任:松本昭彦教授)

呉 吉煥 , 杉野 公則 , 岩崎 博幸 , 吉川 貴己 , 富山 泉 , 鈴木 章 , 松本 昭彦

(1990年11月19日受付)

I.内容要旨
甲状腺分化癌の気管浸潤例17例に対して,その浸潤様式を病理組織学的検索を行い,その切除範囲について検討した.
1)甲状腺分化癌の気管粘膜浸潤部における形態を肉眼的に3つのtypeに大別した.
i)Type I(腫瘤形成型):浸潤部が大きく腫瘤を形成し,その境界が明瞭であるもの.
ii)Type II(境界不明瞭腫瘤形成型):浸潤部が大きく腫瘤を形成するが,その境界がなだらかで不明瞭であるもの.
iii)Type III(微小浸潤型):浸潤部が微少で,その範囲が1.0cm以内のもの.
その結果Type I,IIはそれぞれ4例(23.5%),Type IIIは9例(52.9%)であった.
2)気管粘膜における癌の先進部の浸潤様式を限局型と浸潤型とに分けて検討すると,Type Iでは全例限局型であり,Type IIでは全例浸潤型であった.Type IIIでは限局型2例,浸潤型7例であった.
3)気管粘膜における低分化癌の出現頻度を見てみると,Type I,II,IIIのそれぞれは2例,4例,6例に低分化癌が認められ,全症例の70.5%であった.
4)癌の浸潤範囲を気管外膜浸潤部と気管粘膜浸潤部とで比較してみると,Type I,IIIは全例気管粘膜浸潤部が気管外膜浸潤部の範囲に限局されていた.Type IIは2例が気管粘膜浸潤部が気管外膜浸潤部より広範囲であった.
以上の結果より,甲状腺分化癌の気管浸潤例の切除にあたり,Type I,IIIは気管外膜浸潤部の切除範囲で根治性が得られると考えられる.一方,Type IIは気管粘膜に広範囲な癌の浸潤が考えられるため,その切除にあたり術中診断を要する.

キーワード
甲状腺癌, 甲状腺低分化癌, 気管浸潤, 気管切除範囲, 気管浸潤様式

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