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日外会誌. 92(12): 1686-1693, 1991


原著

大腸癌のリンパ管侵襲 Prospective study による予後因子としての評価について

久留米大学 医学部第1外科

白水 和雄 , 磯本 浩晴 , 諸富 立寿 , 荒木 靖三 , 掛川 暉夫

(1990年11月13日受付)

I.内容要旨
大腸癌におけるリンパ管侵襲の予後因子としての評価を明らかにするために長期間にわたるprospectiveな研究を行い以下の結果を得た.①リンパ管侵襲の程度は,深達度,リンパ節転移,stage等が高度になるに従いly2,ly3の中等度以上のリンパ管侵襲が高率であった.②組織型では中分化腺癌および低分化腺癌に中等度以上のリンパ管侵襲が高率であった.③治癒切除後の再発については,リンパ管侵襲が中等度以上の症例では,軽度以下の症例に比べて血行性再発だけでなく非血行性再発も高率に認められた.④生存率についてstage別の検討をすると,stage 2,stage 3ではリンパ管侵襲が軽度以下の症例(ly0+ly1群)の7年生存率はそれぞれ89.8%,85.6%と高率であったが,中等度以上の症例(ly2+ly3群)では,それぞれ67.1%,66.1%と低率で,有意な差が認められた.しかし,stage 4では両群に有意な差は認められなかった.以上のことより,①リンバ管侵襲の程度は癌の進行度,組織型,再発等に極めて関連性が深いと考えられた.②stage 2,stage 3ではリンパ管侵襲の程度は重要な予後因子となるが,stage 4では重要な予後因子とはなりえなかった.③著者が確立したリンパ管侵襲の診断基準は生存率を判定する良い指標となることが実証された.

キーワード
リンパ管侵襲, 大腸癌, 予後, 生存率

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