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日外会誌. 92(11): 1642-1649, 1991


原著

術前穿刺吸引細胞診標本における乳癌細胞核異型度の客観的評価
ー核面積変異係数と病理組織学的所見および術後遠隔成績との関連についてー

千葉大学 医学部第1外科学教室(主任:奥井勝二教授)

宮内 充

(1990年9月11日受付)

I.内容要旨
十分な根治術が施行されていた浸潤性乳管癌84例の術前穿刺吸引細胞診Giemsa標本において核形態の画像解析を行い,核異型度の主構成因子である核の大小不同性の指標として核面積変異係数(NA.CV)を算出し,予後および既知の組織学的予後因子との関連について検討した. NA.CVは光顕レベルでの従来の核異型度評価を良好に反映していた.術後5年以上健存群(51例)と5年以内の遠隔臓器再発群(33例)との間でNA.CVはそれぞれ26.8±4.9%, 39.0±7.5%と有意差を示した(p<0.01).既知の組織学的予後因子とNA.CVの間で術後5年以内の遠隔再発に関する多変量解析を行うと,NA.CVは独立した重要な予後因子であった.さらにNA.CVは術後健存期間(DFI)との間に関連を示した. NA.CV30%以下の症例は90.7% (39/ 43)が健存例であり, 40%を超えるものは全例(13例)が再発例であった.また術後2年以内再発例の45.8%(11/24) は高NA.CV (40%<)を示したが,2年以降再発例のNA.CVには一定の傾向がなかった.以上よりNA.CVは術前穿刺吸引細胞診材料における核異型度を客観的に表現し,乳癌の早期予後ならびに生物学的悪性度に関する重要な情報を根治術前に与えるものと期待された.

キーワード
乳癌, 穿刺吸引細胞診, 予後因子, 核異型度, 核面積変異係数

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