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日外会誌. 92(11): 1636-1641, 1991


原著

WHO甲状腺腫瘍組織分類による濾胞癌症例の再検討

東北大学 医学部第2外科
*) 東北大学 医学部第2病理

高屋 潔 , 増田 高行*) , 森 洋子 , 松本 都 , 井口 淳子 , 森 昌造

(1990年12月15日受付)

I.内容要旨
1988年に刊行されたWHO甲状腺腫瘍組織分類の中の濾胞癌の診断基準に則って, 1965~1988年の24年間の教室の濾胞癌57症例の病理組織診断見直しを行ってみた.
濾胞癌の分化癌に占める頻度は17.9%から8.3%(26例)へと約半減した.内訳はwidely invasive typeとminimally invasive typeが13例ずつであった. 24例が乳頭癌に診断変更となったが,内訳は一部に乳頭状構造を持つためが20例,乳頭癌のfollicular variant typeが4例であった.乳頭癌に診断変更となった症例の予後は従来の乳頭癌のものとほぼ同じで, WHO基準で濾胞癌となった症例より明らかに良好であった.濾胞癌の遠隔転移の頻度は28.1%から42.3%へと約1.5倍に上昇した.さらにminimally invasive typeとwidely invasive typeに分けると遠隔転移頻度はそれぞれ23.1%, 61.5%となった.
以上より, WHOの濾胞癌の診断基準は,教室症例の検討では臨床的に見て妥当なものと言える.しかもWHO診断基準で濾胞癌と診断された症例では遠隔転移は高頻度であって,今後この診断基準により濾胞癌とされた症例については,遠隔転移の存在を前提にした治療方針で望む必要性があると考えられた.

キーワード
甲状腺濾胞癌, WHO 甲状腺腫瘍組織分類, 甲状腺癌の予後

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