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日外会誌. 92(11): 1617-1626, 1991


原著

マイクロ波組織凝固装置の組織障害に関する実験的研究

秋田大学 医学部第1外科
*) 東北大学 医学部第1病理

浅沼 義博 , 小山 研二 , 佐藤 泰彦 , 澤井 高志*)

(1990年10月12日受付)

I.内容要旨
マイクロ波組織凝固装置(MTC)の組織障害性を犬を用いて実験的に検討した. MTCを用いて60W, 60秒間通電を10回連続して行い,肝を割断した際の肝静脈血検査により,GOT,GPT,乳酸,FDP,エンドトキシン値は増加し,ヘパプラスチンテストで示される凝固能は低下した.しかしすべての因子は1週間後にはほぼ正常化していた.次にMTCの組織障害性を,60W,60秒間1回通電することにより検討し,以下の成績を得た. 1) MTCによる肝細胞障害は,熱による直接的障害と硬塞による凝固壊死の2つからなる.その範囲は前者で約10mmまで,後者で約20mmまでである. 2) グリソン鞘内脈管の障害は,電極から5cm離れても認められる. 3)腹膜炎の存在は, MTCによって生じた壊死部の吸収を遅らせる.
以上より臨床的に, MTCを用いて肝切除を行う際の留意点を列記すると, 残すべき脈管からは10mm以上離して使用すること,そのために術中超音波の併用が必須であること,切離面からの胆汁のリークは防止すること,そのためには術中胆道リークテストが必須であること,肝の深部ではMTCの使用は可及的に控えCUSAなど組織障害の少ない機器を併用することなどが重要である.

キーワード
マイクロ波組織凝固装置 (Microwave Tissue Coagulator : MTC), 肝切除, 組織障害, 感染, 硬塞

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