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日外会誌. 92(11): 1593-1601, 1991


原著

顕微蛍光測光法に基づくヒト大腸癌の細胞増殖動態解析
ー臨床・病理学的所見との対比ー

1) 滋賀医科大学 外科学第1講座
2) 京都府立医科大学 第1病理学教室

橋本 敏和1)2) , 小玉 正智1) , 芦原 司2)

(1990年9月18日受付)

I.内容要旨
ヒト大腸癌の細胞増殖動態を落射型顕微蛍光測光法を用いた検索と大腸癌取扱い規約に準じた臨床病理学的所見の対比から検討した. 91例の解析結果より,大腸癌は増殖動態パターンの違いから, I群(2倍体系増殖細胞集団, 22例), II群(多倍体系増殖細胞集団, 44例), II'群(多倍体および異数倍体系増殖細胞集団, 25例)に分類された. これらの増殖動態パターンと臨床病理学的所見から, I群およびII'群は高分化型腺癌に多く, II群は高分化型腺癌および中分化型腺癌に多く認められ,増殖動態パターンと病理組織学的分類の関連は少なかった.また,早期癌ではI群はIsおよびIpに, II群およびII'群はIpに多く,進行癌ではI, II, II'群とも2型に多く認められ,増殖動態パターンと肉眼的分類の関連も少なかった.しかし, I群は大腸の全域にほぼ同程度に認められたのに対し, II群およびII'群は下部大腸に多い傾向を示し,増殖動態パターンと占居部位の関連が認められた.さらに,m癌はほとんどがI群であるのに対し, sm以上の癌ではII群およびII'群が多く, m癌とsm癌の間で増殖動態パターンに違いが認められた.また, 2倍体細胞の頻度は, I群およびII'群では壁深達度に関わりなく変化が少ないのに対して, II群では壁深達度が増すに連れて減少する傾向を示したことから,粘膜下に浸潤するとI 群の一部がII 群またはII' 群に変化し,その後は増殖•生長に伴って, I群およびII'群はあまり変化せず, II群は多倍体化が進行するものと考えられた.
一方,転移に関しては,肝転移は3群間であまり差がなかったが, リンパ節転移はII群に多い傾向が認められたことからリンパ節転移と多倍体化の関連性が伺われた.

キーワード
ヒト大腸癌, 細胞増殖動態, 落射型顕微蛍光測光法, 大腸癌の増殖•生長

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