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日外会誌. 92(11): 1552-1562, 1991


原著

食道癌根治術前後の栄養管理と免疫能評価に関する臨床的研究

久留米大学 医学部外科学第1講座(主任:掛川暉夫教授)

田中 芳明

(1990年9月18日受付)

I.内容要旨
食道癌手術症例210例を対象に,術後のエネルギー投与量およびその組成が,1) 栄養状態(栄養評価指数;PPNIで判定),2) 細胞性免疫能(末梢血のPHA幼若化能,リンパ球数,リンパ球NK活性,Leu-7陽性細胞数で判定),3) エネルギー代謝(窒素平衡,尿中3-methylhistidine排泄量(3-MH),Alanine,Glutamineの大腿動静脈較差,rapid turnover protein(RTP),呼気ガス分析で判定)にどのような影響を及ぼすかを検討し以下の結論を得た.
1) PPNIの変動から,I群(43±2.0kcal/kg/day)の回復がII群(32±3.2kcal/kg/day)よりやや良好な傾向にあり,術後早期からの高エネルギー投与が,術後後期(1ヵ月以降)の栄養改善に基礎的影響を与えることが推測された.
2) I群において,術後早期ではPHA幼若化能で統計学的有意差(p<0.05)をもって,その回復が良好で,後期ではこれに加えて,リンパ球NK活性およびLeu-7陽性細胞数で有意に良好な推移が認められた.しかしながら,BCAA濃度,脂肪投与量による明らかな影響は認められなかった.この事より,エネルギー組成による影響は少なく,高エネルギーを投与することで,細胞性免疫能賦活効果が期待できるものと思われた.
3) 窒素平衡,尿中3-MH排泄量, RTPでは, Ia1群, Ia2群(Ia1群:脂肪1.1g/kg/day,Ia2群:0.6g/kg/day)間に有意差は認められなかったが,Alanine,Glutamineの大腿動静脈較差では,Ia1群で有意に良好な結果が得られ,また術後早期の脂肪の燃焼も良好であった.
以上より,食道癌術後の栄養管理としては,高濃度BCAA(30%),高濃度脂肪(>1g/kg/day)のエネルギー組成で,40kcal/kg/day以上のエネルギー投与が望ましいと考えられた.

キーワード
食道癌, 栄養評価, 細胞性免疫能, BCAA, 間接熱量測定

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