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日外会誌. 92(10): 1503-1508, 1991


原著

一側肺動脈閉塞試験時と肺摘除術後の右心負荷の検討

福島県立医科大学 第1外科

大石 明雄 , 管野 隆三 , 高野 祥直 , 鈴木 弘行 , 薄場 彰 , 井上 仁 , 元木 良一

(1990年9月10日受付)

I.内容要旨
肺摘除術は,肺血管床の絶対的減少による右心後負荷の上昇を伴うため,心肺予備力の低下症例では右心不全を合併する危険性がある.そこで,UPAO試験によって術後の右心負荷を予測する際の問題点を検討した.比較した循環動態因子は,心拍数(HR),心係数(CI),一回拍出係数(SI),平均右房圧(mRAP),全肺又は肺小動脈血管抵抗指数(TPVRI,PARI),分時又は一回右心仕事量指数(RW, RVSWI)である.
UPAO試験時は, PARI,TPVRI,RVSWIとRWが術前に比し有意に上昇した.他の因子では有意の変化はなかった.これらの結果から,UPAO試験時では,肺血管床の絶対的減少によって右心後負荷は上昇するが,右心ポンプ機能は,右心仕事量,即ち,右心収縮力の上昇により術前と同様に保たれることが示唆された.
術当日は,HR,PARIとRWが術前に比し有意に上昇し,SIは有意に低下した.第2病日は,HRとPARIが有意に上昇し, SIとmRAPが有意に低下した.これらの結果から,肺血管床の絶対的減少が必ずしも右心後負荷を上昇させないこと,右心前負荷の低下があること,右心ポンプ機能は,心拍数が増加することにより術前と同様に保たれること,右心仕事量の増加は術後早期に低下することが示唆された.
UPAO試験時と術後の比較では,術後全経過で,HRが有意に上昇し,SIとRVSWIが有意に低下した.第1病日以降は,mRAPが有意に低下し,第2病日は,RWが有意に低下した.即ち,術後の右心負荷をUPAO試験で予測する際には,UPAO試験時と術後では肺血管床の絶対的減少に対する代償機序が異なるため,術後の右心負荷が過大評価される危険性があることを念頭に置くべきである.

キーワード
肺摘除術, 一側肺動脈閉塞試験, 右心負荷, 右心機能

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