[書誌情報] [全文PDF] (4796KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 92(8): 986-996, 1991


原著

膵頭部癌の大動脈周囲リンパ節転移に関する臨床的研究

金沢大学 医学部第2外科学教室(主任:宮崎逸夫教授)

小林 弘信

(1990年7月27日受付)

I.内容要旨
膵頭部癌のNo. 16転移経路を追求するために,同部までのリンパ節郭清が行われた膵頭部癌切除42例のリンパ節転移状況を検討し,さらにCH44(40)あるいは111ln colloidを用いた膵実質内注入による膵リンパ流の検討を膵頭部領域癌それぞれ10例,7例に施行し,以下の知見を得た.各リンパ節転移をみるとNo. 13が69.0%ともっとも高率であった.No. 16転移については7例,16.7%にみられた.No. 16を除くリンパ節転移例のうちNo. 16も同時に認めた症例の占める比率ではNo. 14が高率(43.8%)であった.一方,No. 16転移例では単独転移例を認めず全例No. 14転移を認め,No. 14とNo. 16の強い関連性を示した.このことより順行性転移の立場に立脚すると膵頭部よりNo. 16への主転移経路はNo. 13→No. 14→No. 16であった.しかし,検索例ではNo.13を介さない経路,CH44(40)の検討ではNo. 14を介さない経路111ln colloidの検討ではNo. 13,No. 14を介さない経路も推定された.また,No. 14内経路についてのCH44(40)の検討では14bに最も多く77.8%移行するものの,臨床上は14a,c,dへの単独転移例も認め,No. 14内では複雑な経路を辿るものと推定された.No. 16転移を来しやすい癌腫の組織学的所見は,rpe,i,ly陽性,INFβ,γ例および間質結合織の多寡では中間型,硬性型であった.腫瘍径については一定の傾向を認めなかった.No. 16内でのひろがりをCH44(40)および111ln colloidの検討でみると,まず16b2,Interに移行し順次ひろがるが,腹側方向から背側方向へのひろがりが平面方向のひろがりに優先し,No. 16内移行早期ではInter,rt-RA下に40.0~57.1%,さらにAor-latero,lt-RA下にも25.0~28.6%の移行を認めた.以上より,膵頭部癌の根治的切除をめざすためにはNo. 14,16を含む広範囲郭清が重要要素となり,No. 16の郭清に関してはAorta左側も含み広範囲に,とくに深さでは両側腎動脈より深部レベルまで行う必要があると思われた.

キーワード
膵頭部癌, 膵リンパ流, 大動脈周囲リンパ節転移, CH44 (40), 111In colloid  

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。