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日外会誌. 92(8): 974-985, 1991


原著

Total biliary diversionー胆囊・空腸・膀胱吻合術ーの消化管ホルモン分泌と膵形態に及ぼす影響

東北大学 医学部第1外科

高橋 道長 , 佐々木 巌 , 内藤 広郎 , 舟山 裕士 , 神山 泰彦 , 戸田 守彦 , 松野 正紀

(1990年7月21日受付)

I.内容要旨
雑種成犬6頭を用いて慢性的なtotal biliary diversion(以下TBD)モデルを作製し,TBDの各種消化管ホルモン分泌に及ぼす影響と膵の組織学的変化について検討を加えた.
総胆管の結紮切離と同時に小腸中央部約20cmの有茎空腸を間置して胆囊空腸膀胱吻合(以下C-J-C)を行い,胆汁を尿路系へdivertするTBDモデルを作成した.さらに,C-J-C施行12週後に胆汁の流路変更術を行い(胆囊空腸十二指腸吻合:C-J-D)胆汁の内瘻化を図った.
便中chymotrypsin値は,C-J-C術後は術前値の約20%まで低下したが,C-J-D術後は術前値にまで回復した.血漿cholecystokinin(以下CCK)値とpancreatic polypeptide(以下PP)値は,C-J-C術後はいずれも基礎値から高値を示したうえ脂肪食負荷後は術前に比べて3倍以上の反応量が得られたが,C-J-D術後は術前値とほぼ等しい値まで低下した.血漿gastrin値の反応量は術前後で有意の変化はみられず,また血漿GIP値は脂肪食負荷に対する反応はC-J-C術後はほとんど完全に抑制されたが,C-J-D術後は術前とほぼ等しい値にまで回復した.
膵組織についてみると,C-J-C術後12週膵の光顕像では腺房細胞のcellularityが極めて高く,個々の細胞が大型化していたが,是顕的には腺房細胞の粗面小胞体の増量とともに小胞体腔が拡張し,個々の腺房細胞が肥大を示した像が認められた.一方,C-J-D術後8週膵ではこれらの変化は失われ,術前に戻りつつある組織像が得られた.
以上より,腸管内胆汁とCCK分泌の間には膵蛋白質分解酵素を介すると考えられるfeedback mechanismが存在することが示唆され,TBDでみられたPP分泌の亢進と膵腺房細胞の肥大の発生機序は,CCKの分泌亢進を介したものと考えられた.

キーワード
total biliary diversion, cholecystokinin, 膵腺房細胞肥大


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