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日外会誌. 92(8): 933-939, 1991


原著

十二指腸液胃逆流によるラット胃発癌
ー胆汁,膵液の分離逆流モデルによる検討ー

金沢大学 医学部第2外科(主任:宮崎逸夫教授)

藤村 隆

(1990年8月13日受付)

I.内容要旨
十二指腸液のうち胆汁,膵十二指腸液いずれの成分に胃癌発生作用があるかをラットで検索した.61頭の雄性ウィスター系ラットを4群に分け,以下の実験群を作成した.全十二指腸液の逆流群(TR群),胆汁のみの逆流群(BR群),膵液のみの逆流群(PDR群),単開腹群(control群)である.手術後50週で動物を屠殺した.癌腫はTR群とBR群のみに認められた.組織学的な発癌率はTR群7/17(41%),BR群2/8(25%),PDR群0/16(0%),control群0/20(0%)であり,TR群とBR群の発癌率はPDR群とcontrol群よりも有意に高かった.胃液のpHは逆流をともなうTR群2.99±0.64,BR群3.71±1.44,PDR群3.75±1.61の方がcontrol群2.57±0.25より有意に高く,胃は低酸環境下にあった.胃液内の総胆汁酸の濃度は,TR群1,080±570μM/l,BR群4,940±3,330μM/lと高濃度であったのに対してPDR群37±62μM/l,control群102±102μM/lと低く,TR,BR群ともにPDR,control群に対して有意差が認められた.以上より十二指腸液逆流によるラット胃発癌の原因は膵液よりはむしろ胆汁の関与が示唆された.

キーワード
十二指腸液胃逆流, 胃発癌, 胆汁, 膵液

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