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日外会誌. 92(8): 921-932, 1991


原著

食道癌開胸開腹術式が胸郭運動に与える影響についての臨床的研究(第1報)

京都大学 医学部第1外科(主任:戸部隆吉教授)

里村 一成

(1990年8月9日受付)

I.内容要旨
食道癌右開胸開腹術式の呼吸運動特に生理学的胸壁の運動への影響を住友らの開発した胸郭運動測定装置で検討を加えた.この胸郭運動測定装置は従来のものと比して次の3点で有用性を認めた.1)測定体位が自由にとれる.2)変位量が実測できる.3)検査が簡便である.
この装置を用いて胸郭運動を鎖骨中線上左右第3及び第8肋間,胸骨柄部,膀部の6ヵ所の測定部位で呼吸運動による前後径の変化を記録し,安静呼吸時と深呼吸時の変位量で検討した.症例は食道癌に対する右開胸開腹術式36例(以下I群)と上腹部正中切開術式の胃癌等の症例22例(以下II群)で,この2群間で胸郭運動,従来からの呼吸機能検査,血液ガス分析を術前後で比較し,次の結果を得た.1)開胸側の開胸部より尾部の運動が,I群の座位安静呼吸でII群と比して有意に低下していた.2)従来の呼吸機能検査や血液ガス分析では両群間で有意差は得られなかった.3)座位安静呼吸以外では現在食道癌に行われている術式は術後約2ヵ月で開腹術式と胸郭運動に与える影響に明確な差を認めないことが示唆された.

キーワード
胸郭運動, 食道癌, 右開胸開腹術式, 生理学的胸壁

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