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日外会誌. 92(7): 874-884, 1991


原著

人工血管吻合部強度に関する実験的研究
ー抗張力と病理組織学的検討ー

横浜市立大学 医学部第1外科(主任:松本昭彦教授)

芦沢 賢一

(1990年5月5日受付)

I.内容要旨
各種人工血管吻合部の強度を実験的にその抗張力と病理組織学的所見より比較し,吻合部強度を規定する因子について検討した.
使用した人工血管は内径6mmのwoven Teflon graft(以下WT),woven Dacron graft(WD),woven Dacron velour graft(WDV),knitted Dacron velour graft(KDV),expanded polytetrafluoroethylene graft(E-PTFE)である.この5種類の中より比較検討しようとする2種類の人工血管を縦につなぎ合わせた長さ約3.0cmのcomposite graftを5種類作製し,雑種成犬52頭の腹部大動脈に中枢,末梢交互に置換移植した.縫合糸は吻合部における糸の役割を除くため吸収性のpolyglycolic acid sutureを使用し,移植後16週の開存例について両側吻合部抗張力を測定した.又それぞれの人工血管について移植後16週の標本を作製し組織学的に検討した.特にE-PTFEについては経時的に標本を作製し検討した.
吻合部が離開する時の抗張力はvelour型人工血管(WDV,KDV)とE-PTFEがnon-velour型人工血管(WT,WD)より大きく,又断裂部の状態はnon-velour型人工血管では新生外膜がgraft外面より著明に剝離されて離開していた.これより人工血管吻合部強度を保持するためには良好な新生外膜の形成とそのgraftへの密な固着が必要であり,velour型人工血管が優れていると考えられた. E-PTFE人工血管は仮性内膜の器質化は不良であるが,crimp構造がないことより新生外膜の形成が平坦で極度に脆弱な部分がなく,吻合部強度の上で有利であると考えられた.しかし吻合部生体血管には変性壊死部が認められ,E-PTFEについてはさらに長期の検討が必要であると考えられた.

キーワード
人工血管, 吻合部強度, 器質化, crimp 構造, 仮性内膜走査電顕像

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