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日外会誌. 92(7): 852-861, 1991


原著

心臓手術による nonthyroidal illness の研究

鳥取大学 医学部第2外科(主任:森  透教授)

小林 薫 , 岡田 稔 , 石黒 真吾 , 谷口 厳 , 林 英一 , 荒木 威 , 森 透

(1990年4月3日受付)

I.内容要旨
心臓手術によるnonthyroidal illnessの病態と下垂体,甲状腺への影響を探るために血中の下垂体ホルモン(TSH,PRL),甲状腺ホルモン(free-T4,free-T3),甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG),脂質(TG,FFA)の濃度を測定し,検討を行った.対象は成人の先天性,後天性の心疾患患者30例である.測定日時は手術前日,手術後2日目,手術後3週目の午前6時とした.血中TSH濃度は3.54±0.22μU/ml,0.62±0.07μU/ml,3.07±0.28μU/mlと変動した.血中PRL濃度は18.30±1.37ng/ml,10.72±1.28ng/ml,16.25±1.31ng/mlと変動した.血中free-T4濃度は1.19±0.04ng/dl,1.01±0.06ng/dl,1.26±0.06ng/dlと変動した.血中free-T3濃度は3.24±0.11pg/ml,1.70±0.11pg/ml,2.73±0.14pg/mlと変動した.血中TBG濃度は17.04±0.65μg/ml,13.44±0.63μg/ml,16.16±0.74μg/mlと変動した.血中TG濃度は128.3±17.3mg/dl,93.5±7.9mg/dl,112.2±20.1mg/dlと変動した.血中FFA濃度は376.3±38.3μEq/l,626.9±51.4μEq/l,415.9±70.0μEq/lと変動した.手術後2日目において,血中free-T4とfree-T3濃度の低下は甲状腺からのT4の分泌の低下と末梢臓器における変換酵素であるiodothyronine 51-deiodinaseの活性の低下によるものと考えられた.手術後における血中FFA濃度の増加は血中free-T3濃度の減少に関与する主要な因子ではないと考えられた.手術後3週目においては,各測定項目の血中濃度は手術前日の値に回復した.手術後2日目において患者の血中free-T4濃度と血中free-T3濃度は低下を示しているが,この状態を甲状腺ホルモン剤によって補充する必要はないと考えられた.

キーワード
心臓手術, nonthyroidal illness, 下垂体ホルモン, 甲状腺ホルモン, TBG

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