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日外会誌. 92(6): 750-752, 1991


症例報告

グラム陽性球菌による一次性大動脈空腸瘻の一治験例

大阪市立大学 医学部第2外科
*) 城東中央病院 外科

塚本 泰彦 , 井川 澄人*) , 田中 宏 , 加地 政秀 , 岩佐 隆太郎 , 木下 博明

(1990年6月26日受付)

I.内容要旨
稀な細菌性大動脈炎による一次性大動脈空腸痩(以下本症)を治癒せしめたのでその治療法について文献的考察を加え報告する.症例は46歳男で,主訴は腹部拍動性腫瘤であった.入院時ショック状態で腹部に拍動性腫瘤を触知した.CT像上腎動脈下に動脈瘤と小腸への造影剤の流出が認められ,本症と診断した.緊急開腹したところ腎動脈下に偽動脈瘤を認め,腎動脈分岐部大動脈と空腸痩を形成していた.大動脈破裂部位を直接縫合し,偽動脈瘤を切除後,腎動脈下大動脈をY型人工血管で置換した.空腸穿破部は層別二層縫合により閉鎖された.大動脈壁の培養でグラム陽性球菌を検出し,病理組織学的にもグラム陽性菌を認めたため感染性大動脈炎による本症と診断した.本症は極めて稀な疾患で,グラム陽性菌を証明し救命し得た症例は,本症例が本邦第1例である.

キーワード
一次性大動脈腸瘻, 細菌性大動脈炎, グラム陽性球菌


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