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日外会誌. 92(6): 740-745, 1991


原著

破裂性腹部大動脈瘤手術症例の検討
ーとくに呼吸機能,及び顆粒球エラスターゼとの関連についてー

*) 鹿児島大学 医学部第2外科
国立南九州中央病院 外科・心臓血管外科
**) 阿久根市民病院 外科

石部 良平*) , 丸古 臣苗**) , 有川 和宏 , 田畑 傅次郎 , 増田 宏 , 金城 玉洋 , 平 明*)

(1990年7月11日受付)

I.内容要旨
1981年7月より1989年12月までに経験した腹部大動脈瘤手術症例52例(非破裂待期手術例34例,切迫破裂例5例,破裂例13例)を対象として手術成績,呼吸機能,瘤径等について検討を加えた.また,呼吸機能障害と大動脈瘤形成の双方に関与すると言われている顆粒球エラスターゼについても検討した.手術死亡率は破裂例13例中4例(30.8%),切迫破裂例5例中1例(20%)で,非破裂待期手術例に死亡例はなかった.全体の死亡率は9.6%であった.死亡原因としては腹腔内出血による台上死2例,腸管壊死による敗血症2例,術後心筋梗塞1例であった.呼吸機能の指標として,%肺活量(%VC),1秒率(FEV 1.0%),V75,V50,V25,V25/身長(Ht)等を測定した.破裂例のFEV 1.0%,V75,V50,V25,V25/Htは非破裂待期手術例や腹部大動脈瘤以外の一般外科手術症例(対照)に比して有意に低下していた.またroom air吸入時の動脈血酸素ガス分圧も破裂例では有意に低下していた.顆粒球エラスターゼ値に統計学的に有意差はみられなかったものの,破裂例は非破裂待期手術例に比して高い傾向がみられた.破裂例,切迫破裂例の瘤径は非破裂待期手術例に比して有意な増大を示していた.
通常,呼吸機能障害は腹部大動脈瘤手術時の危険因子としてあげられているが,今回の検討で破裂を予想させる因子のひとつでもあることが窺われた.また,顆粒球エラスターゼ値に有意差はみられなかったものの,破裂例で高い傾向にあり瘤破裂の要因として関与している可能性が考えられた.これらの因子は瘤径の増大,高血圧等従来の破裂予側因子とともに注意を喚起されるべきで,積極的な手術療法への指標となることが示唆された.

キーワード
破裂性腹部大動脈瘤, 呼吸機能, 顆粒球エラスターゼ

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