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日外会誌. 92(6): 727-733, 1991


原著

内胸動脈グラフトと胃大網動脈グラフトの類似性
ー薬物に対する反応を中心にー

*) 大阪医科大学 胸部外科
**) 北大阪病院 心臓血管外科
***) 三井記念病院 循環器外科

小池 龍**) , 須磨 久善**) , 近藤 敬一郎*) , 奥 孝彦*) , 木村 弘**) , 武内 敦郎*)

(1990年6月18日受付)

I.内容要旨
冠動脈バイパス術(CABG)におけるグラフト材である内胸動脈(ITA),胃大網動脈(GEA),伏在静脈(SV)の,薬物に対する反応特性を検討した.in vitroで,エルゴノビン(E),セロトニン(S)に対する等尺性張力は,ITAとGEAで全く類似していた.しかしSVは,ITAとGEAに比し,低い濃度で大きい収縮張力の発生をみた.SVのE,Sに対する50%有効値は,ITA,GEAより有意に低く,却ち,SVのほうがE,Sに対する感受性が高かった.フェニレフリン(P)に対しては,3者ともに近似した濃度一張力曲線を示し,各濃度で有意差を認めなかった.Pに対する50%有効値はSV,ITA,GEAともに同等であった.15症例(1.62±0.12M2)の手術時に,0.4%塩酸パパベリンをグラフト内に注入し,その前後でfree flowを実測した.ITAの流量は,注入前71±32,36~150ml/minで,注入後に112±41,66~220ml/minへと有意に増加した.GEAの流量は,注入前82±39,30~200ml/minで,注入後128±40ml,88~240ml/minへと有意に増加した.即ち,ITA,GEAともに採取直後には,少なからずスパスム状態にあると推察され,その解除に塩酸パパベリンは有効であった.さらに,術2.2±2.2月後におけるグラフト別の開存率は,SV:273/312(88%),ITA:171/175(98%)(p<0.05).GEA:25/27(93%)で動脈系グラフトが優れていた.本研究の結果,ITAとGEAは,脈管収縮を誘発するE,S,Pの各薬剤に対する感受性が同等で,平滑筋弛緩薬である塩酸パパベリンに対する反応も同等であることが示された.ITAとGEAは,sizeが冠動脈とほぼ同等,in situで使用可能,動脈硬化が稀などの類似点が報告され,CABGの導管としての適性を備えていると考えられる.以上から,ITA,GEAともに,優れた長期成績を期待しえる有用なグラフト材と考えられる.

キーワード
内胸動脈, 胃大網動脈, 薬剤感受性, 早期開存率, 冠動脈バイパス術

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