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日外会誌. 92(6): 627-635, 1991


原著

LPS 固定化ビーズによる抗腫瘍効果

滋賀医科大学 第1外科(主任:小玉正智教授)

阿部 元

(1990年7月4日受付)

I.内容要旨
グラム陰性菌由来のLipopolysaccharide(LPS)は,様々な生物活性を有しており,その抗腫瘍効果は注目されている.しかし,生体への投与は強い毒性のため治療として用いられなかった.今回著者はポリスチレンビーズにLPSを化学的に固定化した材料を開発し,in vitroおよびin vivoにて抗腫瘍効果を検討した.
E. coliおよびSalmonellaのLPS,さらにLPSを構成する成分の一部(グルクロン酸,シアル酸,KDO)を固定化したビーズを作製し,C3H/HeNマウスおよびSDラット脾細胞と接触刺激してその細胞障害活性を測定した.LPS構成成分を固定したビーズでは細胞障害活性はほとんど誘導できず,C3Hマウスでは,E. coli LPS固定化ビーズで刺激した脾細胞で最も活性が増強され,SDラットの場合では,Salmonella LPS固定化ビーズで刺激された脾細胞で最も活性が増強されていた.これらの活性はinterleukin-2で培養したLAK細胞と同等またはそれ以上に強力なものであった.また刺激直後には活性は誘導されず,刺激後48~72時間の培養で最強の活性が認められた.
C3H/HeNマウス腫瘍にLPS固定化ビーズで刺激した脾細胞を腫瘍内に局注すると,腫瘍増殖が抑制され,生存日数も延長した.SDラット肺転移モデルに刺激脾細胞を静注すると,高率に肺転移が消失した.
以上の結果,LPS固定化ビーズで強力な抗腫瘍効果が得られ,効果が得られるまでに少し時間を要するため,その機序はサイトカインを介してkiller細胞が誘導されると考えられた.また,C3H/HeNマウスとSDラット脾細胞の結果の相違より,動物種によって最も強い抗腫瘍効果が得られる固定化LPSの種類が異なることも推察された.
LPS固定化ビーズを用いた体外循環は,LAK養子免疫療法に代わる悪性腫瘍に対する強力な免疫賦活療法となる可能性がある.

キーワード
lipopolysaccharide (LPS), 固定化材料, 免疫賦活療法, サイトカイン, 細胞障害性

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