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日外会誌. 92(5): 577-586, 1991


原著

乳癌に対するOK-432腫瘍内投与に関する研究
―腫瘍局所の抗腫瘍性免疫反応を中心に―

東京女子医科大学附属第二病院 外科(指導:梶原哲郎教授)

細川 俊彦

(1990年5月8日受付)

I.内容要旨
再発進行乳癌に対するOK-432腫瘍内投与による腫瘍縮小および局所免疫反応の機序を明らかにする目的で,乳癌患者に対し術前にOK-432を腫瘍内投与し,局注局所浸潤リンパ球の詳細な固定を行なった.
対象は原発性乳癌25例である.これを無作為にOK-432腫瘍内投与群10例(手術5日前,生食水2mlにOK-432,10KEを溶解し0.5mlを4ヵ所に分け腫瘍内投与),生食水腫瘍内投与群5例(生食水2mlを4ヵ所に分け投与),および無処置群10例の3群に分け,以下の検索を行なった.手術前1週間:末梢血T細胞比,IgG-FcRT細胞比,PHA幼若化反応.手術当日:末梢血T-cell subsets(OKT-3,4,8)および,OK-432腫瘍内投与群と生食水腫瘍内投与群には,OKT4とLeu-DR,Leu-DRとOKT8,OKT4とLeu18,Leu15とOKT8を組合せ,4種類のtwo colorフローサイトメトリーを行なった.乳房切除直後:腫瘍片の瞬間凍結標本を作成し,Leu2a,Leu3a,Leu7にて免疫組織化学的単染色を行い,さらにLeu2aとLeu15,Leu3aとLeu-DRの組合せで,免疫組織化学的二重染色をほどこし,リンパ球機能の同定を行なった.
非特異的免疫反応および末梢血リンパ球サブセットでは有意差を認めなかった.腫瘍組織浸潤リンパ球では,OK-432腫瘍内投与群のLeu2a細胞陽性率は100%(強陽性70%),Leu3a細胞陽性率は90%(強陽性70%),Leu7細胞陽性率は90%(強陽性0%)であった.さらに,二重染色によるリンパ球機能の同定では,Leu2a細胞はcytotoxic T cell,Leu3a細胞はhelper T cellが多く認められた.
OK-432腫瘍内投与により腫瘍局所には,cytotoxic T cell,helper T cell,NK cellが誘導された.
OK-432腫瘍内投与による腫瘍縮小効果には,これらの細胞による抗腫瘍性免疫反応が関与しているものと示唆された.

キーワード
乳癌, OK-432腫瘍内投与, 腫瘍浸潤リンパ球, Tリンパ球サブセット, 免疫二重染色法

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