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日外会誌. 92(5): 551-561, 1991


原著

硬変肝切除後のエンドトキシン血症と細網内皮系機能に関する実験的研究
―フィブロネクチン投与の意義について―

東京大学 医学部第1外科学教室(主任:森岡恭彦教授)

長島 郁雄

(1990年5月1日受付)

I.内容要旨
硬変肝切除後の急性肝不全の一つの病態モデルとして,thioacetamide硬変肝ラットに70%肝切除を施し,その1時間後に0.2μg/100g体重のlipopolysaccharide(以下LPS)を静注負荷する硬変肝切除後のエンドトキシン血症モデル(LC群)を設定した.正常肝ラットに同様の処置を施したモデル(Control群)を対照とし,さらに網内系機能改善の目的でフィブロネクチン(以下FN)1mg/100g体重をLPS負荷前に補充投与したモデル(LC+FN群)を加え,以下の結果を得た.1)肝切除24時間後の生存率はLC群0%,Control群100%,LC+FN群80%であった.LC群は残肝に微小血栓による循環障害に起因する広範な出血性壊死を来たしていた.2)LPS血中消失率はLC群0.100/min,Control群0.155/min,LC+FN群0.146/minであった.3)網内系臓器へのLPS負荷後15分の集積量は,各群とも肝が最大であったが,その単位重量当たりの投与量に対する集積率は,LC群0.96%,Control群3.00%,LC+FN群1.46%,肝全体での集積率は各々5.95%,8.20%,9.21%であった.4)LC群は術後血漿FNの減少と血清総胆汁酸の増加が顕著であったが,LC+FN群ではその変動は軽減された.これらの結果より,硬変肝切除後は肝を中心に著明な網内系機能低下状態にあり,このためにLPS負荷による広範な肝壊死が発生したことが推測され,さらにFNを補充することで,肝網内系機能が改善され,それが回避されたことが示唆された.

キーワード
硬変肝切除, エンドトキシン血症, 細網内皮系, フィブロネクチン

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