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日外会誌. 92(5): 513-525, 1991


原著

肝切離端治癒遷延に関連する因子の解析
ー肝切除後入院期間に影響する因子の検討ー

山梨医科大学 第1外科学教室

河野 哲夫 , 山本 正之 , 菅原 克彦

(1990年4月23日受付)

I.内容要旨
肝切離端治癒遷延因子を解析するために,肝切除25例を対象として,術前,術後1,3,7,14日目にFibronectin(FN),血液凝固第XIII因子(XIII),穎粒球エラスターゼ(PMNE),血小板(Plt),プロトロンビン時間活性値(PT%),動脈血中ケトン体比(AKBR),血液生化学的検査の各因子を測定し,以下の項目で検討した.
1.全肝切除例における各因子の変動と相関関係の検討:FNは術後1,3日目,XIIIは術後14日目に,PT%は術後を通して有意に低下した.PMNEは術後1,3日目に有意に上昇後,14日目に前値に回復した.Pltは術後3日目に有意に低下し14日目に前値に回復した.FNとXIIIの間には正の,FNとPMNEの間には負の,有意な相関関係が認められた.
2.(1)肝硬変併存の有無,(2)発熱の有無(3)肝切離端の形態,(4)ドレーン留置期間,(5)Microwave tissue coagulator(MTC)使用の有無と各因子との関連の検討:(1)肝硬変併存群ではFN(前,1,3,14日目),XIII(7,14日目),PT%(14日目),Plt(前,1,3,7,14日目)は非併存群に比して有意に低値を示した.(2)発熱群ではFN,PT%,Pltは非発熱群に比して低値を,PMNEは高値を示す傾向を認めた.(3)CT・USにおける肝切離端被包形成群ではPT%(14日目)は非形成群に比して有意に低値を示した.被包形成群ではFN,Pltは対照群に比して低値を示す傾向を認めた.(4)ドレーン留置長期群(31日以上)ではFN,Plt,PMNEは短期群に比して低値を示す傾向を認めた.(5)MTC使用群ではXIII(14日目),PT%(14日目),Plt(前,1,3,7日目)は非使用群に比して有意に低値を示した.MTC使用群ではFN,PMNEは対照群に比して低値を示す傾向を認めた.以上より,肝硬変併存,発熱,被包形成,ドレーン留置長期群では対照群に比してFN,XIII,Plt,PT%は低値を示す傾向を認め,肝切除に伴う産生低下と肝切離端感染による消費が原因であると考えられた.
3.多変量解析による肝切除後入院期間に影響する因子の検討:術後入院期間は,数量化理論I類により,肝切離端被包形成,発熱,肝硬変併存,出血量の因子が,また重回帰分析により,WBC,AKBR,PT%,XIII,ICG R15の因子が大きく影響していることが確認された.

キーワード
肝切除, 肝切除の術後管理, 肝切離端の形態, 創傷治癒, 多変量解析

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