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日外会誌. 92(5): 506-512, 1991


原著

胃癌における血中 Tissue polypeptide antigen (TPA) 測定の臨床的意義に関する研究

1) 神戸大学 医学部第1外科
2) 神戸大学医療技術短期大学部 

船坂 真里1) , 多淵 芳樹2) , 斎藤 洋一1)

(1990年5月2日受付)

I.内容要旨
胃癌におけるTissue polypeptide antigen(TPA)測定の臨床的意義の有無を検討する目的で,術中に末梢血(p)と還流血(d)TPAを測定した胃癌40例を対象に,pおよびd-TPA値と癌腫の臨床病理所見・再発率および再発形式並びに術後生存率との関連性を検討した.
p-TPAの平均値(U/l)と110U/l以上の陽性率は203・30%,d-TPAはそれぞれ769・100%と,p-TPAよりも有意に高い値を示した.臨床病理所見11項目とp-TPA陽性率との関連では,肝転移の有無のみに有意な差が認められた.良性疾患の平均値+2SDの726U/l以上をd-TPA陽性とした場合(以下略)の陽性率は占居部位・肉眼型・壁深達度・静脈侵襲との間には有意な関連が,腫瘍径・肝およびリンパ節転移・stage分類との間には関連が認められる傾向があった.再発の有無とp-TPA平均値と陽性率との間に差はなかったが,d-TPAは再発例1,318・59%,健存例518・15%と再発例の平均値と陽性率は有意に高い値を示した.特にd-TPA 1,000以上を示す症例の83%は2年以内に死亡していたが,それ未満の症例では20%と有意に低率であった.d-TPA値と再発形式との間には関連が認められなかったが,p-TPA陽性例は血行性再発が80%と局所再発の0%より有意に多かった.生存率との関連では,pおよびd-TPA陽性例は陰性例よりも生存率曲線は有意に不良で,3年生存率はp-TPA陽性例36%・陰性例71%,d-TPAではそれぞれ39%・73%であった.
以上の成績は,d-TPAはp-TPAよりも胃癌の臨床病理所見との関連性が強く,しかも術後再発率との相関が強いことを示唆している.pおよびd-TPAはともに再発および予後の推定に有用であり,特にp-TPA陽性例は血行性転移再発危険例として,d-TPAが1,000以上を示す症例は術後早期再発危険例として臨床的に対処する必要があると考えられる.

キーワード
胃癌, tissue polypeptide antigen (TPA), 腫瘍還流血, 胃癌再発率, 胃癌生存率

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