[書誌情報] [全文PDF] (1104KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 92(5): 501-505, 1991


原著

胃癌患者に対する成分輸血の影響
ー輸血後肝炎および予後の検討ー

国立岩国病院 外科

竹内 仁司 , 小長 英二 , 井出 愛邦 , 中村 純 , 真壁 幹夫 , 佐々木 明

(1990年4月23日受付)

I.内容要旨
胃癌治癒切除例493例を対象に,成分輸血普及前後の輸血後肝炎の発生頻度および生存率を比較検討するとともに,成分輸血を考慮した輸血量と予後との関係を検討した.輸血後肝炎発生率は成分輸血普及前の前期では3.7%であるのに比較して成分輸血普及以降の後期のそれは5.4%と成分輸血普及後,輸血後肝炎の増加が認められた.一方,5年生存率は前期が62%,後期が67%と有意差を認めなかった.輸血と予後との関係について検討すると,非輸血群の5年生存率84%に対し全血あるいは濃厚赤血球輸血群は57%と明らかに輸血群の予後は不良であり,1~5単位64%,6~10単位48%,11~20単位38%,21単位0%と輸血量に従って予後不良であった.stage I+II症例に限ってみても同様の結果が得られた.輸血量0~5単位の症例を対象に新鮮凍結血漿(FFP)の効果について検討すると,FFP投与群73%,FFP非投与群65%と5年生存率に有意差はなく,FFP投与量1~5単位90%,6~10単位76%とFFP 10単位以下ではむしろ非投与群より予後良好であった.
以上より,成分輸血普及により輸血単位数が増加し,輸血後肝炎の発生率が高くなった.一方,予後に関しては成分輸血前後で著変なく,輸血量に従って不良となった.これらを考慮し不必要な輸血は控え,多量輸血時には全血を使用して輸血単位数を減らすとともに,免疫学的影響を与える白血球成分を除いた輸血を考慮する必要があると考える.

キーワード
胃癌生存率, 成分輸血, 輸血後肝炎, 免疫抑制効果

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。