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日外会誌. 92(5): 489-495, 1991


原著

ドナーリンパ球術中門脈内投与による移植片生着延長効果の検討
ーラット同種皮膚移植をもちいてー

京都府立医科大学 第2外科

李 哲柱 , 吉村 了勇 , 濱島 高志 , 大阪 芳夫 , 岡 隆宏

(1990年5月7日受付)

I.内容要旨
ラット皮膚移植モデルにおいてドナーリンパ球の術中門脈内投与の移植片生着延長効果が,腎移植の系と同様に認められるか否かについて検討した.近交系ラット(BN→LEW)の皮膚移植を行い,レシピエソトを以下の4群に分類した.①皮膚移植のみに行った(コントロール群),②移植直後にドナーリンパ球1×108個を末梢静脈投与した(BN-IV群),③同様に門脈内投与した(BN-PV群),④third party(DA)ラットのリンパ球1×108個を門脈内投与した(DA-PV群).これら4群の平均生着日数は,それぞれ,①9.0±1.4日,②8.6±1.2日,③13.4±3.9日,④8.6±1.5日でありBN-PV群はコントロール群,BN-IV群,DA-PV群に比べ有意(p<0.05)に生着延長が認められた.さらにこの4群に対し,移植後7日目のレシピエントの後足蹠部にドナーリンパ球を皮下注し,DTH反応に対する抑制効果を調べたところ,24時間後の足蹠部の肥厚は,それぞれ,①0.52+0.10mm,②0.46±0.07mm,③0.15±0.10mm,④0.45±0.08mmでありBN-PV群は有意(p<0.05)に抑制されていた.ドナー・レシピエント間の混合リンパ球反応(MLR)に移植後7日目のBN-PV群の脾細胞を加えても抑制効果は認められなかったが,このMLR反応にBN-PV群の血清を加えたところ,正常ラットの血清に比べ77.0±5%の抑制効果が認められた.さらにこのPV血清を皮膚移植及び腎移植を施したレシピエントに,手術当日,術後第1,第2病日にそれぞれ1mlずつ静脈内投与したところ,皮膚移植片の生着延長はなかったものの,腎移植の系においては,コントロール群7.8±0.6日に比べPV血清投与群は16.3±1.1日と有意(p<0.01)に生着延長が認められた.以上の結果より,皮膚移植の系においてもドナーリンパ球術中門脈内投与による移植片生着延長効果が認められ,しかもその効果は血清により移入され得ることが示された.

キーワード
ラット皮膚移植, ドナーリンパ球, 術中門脈内投与, delayed type hypersensitibity (DTH), 血清移入

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