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日外会誌. 92(4): 428-440, 1991


原著

肝臓のhematolymphoid system
―再生肝における造血活性出現の機序―

日本医科大学 第2外科学教室
*) 日本医科大学 微生物学免疫学教室

坂本 俊樹 , 庄司 佑 , 横室 公三*)

(1990年1月30日受付)

I.内容要旨
肝移植後に起こる様々な免疫現象を解析する上で,hematolymphoid systemとしての肝臓の機能を熟知することは重要であると思われるが,未だ充分な知見は得られていない.今回,著者らは,肝におけるhematolymphoid systemの一端を明らかにする目的で,肝部分切除後,マウスの再生肝に出現する造血活性に着目し,その機序の解析を試みた.
1)無処置C3H/Heマウスの末梢血リンパ球画分および肝内リンパ球画分に,造血幹細胞が存在することを,fibrin clot法で見出した.両画分中の造血幹細胞は,肝部分切除後経日的に増量するが,その増量の程度は,肝内リンパ球画分の中で,特に肝に対する膠着性の強い画分において顕著であり,肝部分切除後6日目には,無処置群の約5倍に達した.肝内リンパ球画分には,wheat germ agglutinin陽性細胞が存在し,これらの細胞群も肝再生に伴い増量した.肝内造血幹細胞から誘導されるcolonyは,granulocyte,macrophage,mast cell等を含む多彩なものであり,種々の分化段階にある造血幹細胞が肝内に存在することが推測された.
2)肝実質細胞および肝非実質細胞の,肝内造血幹細胞の維持,増殖,分化に果たす役割を知る目的で,初代培養法を用いて,両細胞画分が産生するcytokineを検索した.肝非実質細胞のみならず,肝実質細胞の培養上清中にも,colony-stimulating activityが検出され,その1つが,granulocytemacrophage colony-stimulating factor(GM-CSF)であることを明らかにした.このことより,肝実質細胞も,GM-CSFをはじめとするcytokineを産生する能力を持つことが示唆された.
これらの事実から,肝臓は,肝実質細胞,肝非実質細胞,肝内造血幹細胞などの細胞群が複雑なnetworkを形成する,hematolymphoid systemであることが示された.

キーワード
liver regeneration, hematolymphoid system, intrahepatic lymphocytes, parenchymal liver cells, GM-CSF

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