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日外会誌. 92(4): 401-410, 1991


原著

胃潰瘍に対する幽門保存胃切除術の長期遠隔成績
―とくに再発例の検討を中心に―

東北大学 医学部第1外科

福島 浩平 , 佐々木 厳 , 内藤 広郎 , 舟山 裕士 , 神山 泰彦 , 高橋 道長 , 松野 正紀

(1990年3月23日受付)

I.内容要旨
教室では胃体中部から幽門部にかけて存在する胃潰瘍134例に対し幽門保存胃切除術を施行したが,今回術後長期の遠隔成績について再発例を中心に検討を行った.
術後愁訴では,消化器症状の発生率は低く長期的(平均術後経過年16.6年)にも優れた成績であり,特にダンピング症候群の発生率はアンケートでは4.4%,問診では0%であった.
今回初めて4例の再発を確認したが,直死例を除き再発率は3.1%,長期生存例で追跡調査可能であった74例についてみても5.4%と低率であった.再発部位は,固有胃腺領域と十二指腸にはさまれた残存幽門腺領域の大蛮側に一定しており,なんらかの局所因子が関与している可能性があるものと思われた.また再発時には,初回手術前あるいはそれ以上の胃酸分泌の亢進が認められ,非再発例と比較しBAO,MAOともに有意の高値を示し,胃酸分泌の亢進が再発に深く関係しているものと思われた.血中ガストリン分泌動態についてみると,再発例では一定の傾向はなく,またG細胞密度の増加も認められなかった.従って,再発例において残存幽門粘膜からのガストリン分泌は,潰瘍再発の直接の原因ではないものと考えられた.本術式は手術適応をより厳密に選択することによりさらに再発率を低下せしめる可能性があり,今後も症例により積極的に行ってよい術式であると考えられる.

キーワード
幽門保存胃切除術, 胃潰瘍, 術後遠隔成績, ダンピング症候群


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